イギリスの数学者。ロンドンに生まれ、ケンブリッジ大学キングズ・カレッジに学ぶ。1936年、計算可能関数の数学的定式化として思考上の計算機械を創案した。これは次のようなもので、彼の名をとって「チューリング機械」とよばれている。(1)限りなく大きな紙をもっている、(2)有限個の記号を用いる、(3)おのおのの瞬間に有限個のものを読み取る、(4)記憶の状態が有限個あり、各瞬間にどれか一つの状態にある、(5)現在みているものが何であり、状態が何であるかによって、次に何を消し、何を書き加え、どこに目を移すか、さらに次の状態が何であるかが決まる。
関数が計算可能とは、その関数を計算するチューリング機械をつくることができることであり、この機械によって計算可能な関数は帰納的な関数と同じである。
[西村敏男]
1966年、計算機科学・情報技術分野において優れた功績を残した人に贈られるチューリング賞が創設された。
[編集部]
イギリスの数学者で,計算の理論の基礎づけの研究,実用の計算機の開発に従事した。ケンブリッジ大学卒業後,プリンストン大学へ移り,そこで《計算可能な数とその決定問題への応用》を発表し,計算可能な数はチューリング機械で計算できる数と同じであることを示すとともに,ヒルベルトの決定問題は解けないことを証明した。第2次大戦中は,イギリスでドイツ軍の暗号解読の仕事に携わった。戦後,国立物理学研究所(NPL)やマンチェスター大学において,計算機の設計や数値計算法を考案した。チューリングは生物の形態発生の理論にも興味を示し,化学物質の濃度の分布と形態形成との関係を研究した。陸上競技の得意なスポーツマンでもあり,何でも自分でやってみるという好奇心の持ち主であったが,過ってとった毒が原因で死亡。
執筆者:和田 英一
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…形態形成の数学理論は,生物学的には,この間をつなぐ作業仮説としての性格をもつ。1952年にチューリングA.Turingは放物型偏微分方程式によって形態形成の説明を試みた。細胞の特性を決める複数種の化学物質を想定し,これらは触媒的な反応によって平衡濃度をもつものと仮定する。…
…そのため,計算可能な関数は,メモリーがいくらでもある(理想化された)コンピューターで計算できる関数と一致する。
[歴史]
計算可能性の概念は,計算とは何かという問いに答えようとする試みを通じて,1930年代にゲーデル,チューリング,チャーチAlonzo Church(1903-95),クリーネStephen C.Kleene(1909-94)等の有力な論理学者のさまざまの提案を集大成し得られたものである。ゲーデル,クリーネは,いくつかの基礎的な自然数上の関数をもとに新しい関数を順次組織的に定義する枠組みを与えて帰納的関数の概念を定式化した。…
…形態形成の数学理論は,生物学的には,この間をつなぐ作業仮説としての性格をもつ。1952年にチューリングA.Turingは放物型偏微分方程式によって形態形成の説明を試みた。細胞の特性を決める複数種の化学物質を想定し,これらは触媒的な反応によって平衡濃度をもつものと仮定する。…
…アルゴリズムとは計算や論理演算を機械的に実行する手順のことである。1930年代にA.M.チューリングは今日チューリング機械と呼ぶ仮想的な機械を考えて,一定の手続きに従って実行可能な論理演算(数値計算を含む)はすべてこの万能チューリング機械で計算できることを示した。同時に彼は機械では原理的に計算できない関数の存在も示したのである。…
…イギリスの数学者A.M.チューリングは1936年に発表した論文で,数学基礎論で当時懸案となっていた〈計算可能とはどういうことか〉という問題に対する一つの解答として,ある仮想的な機械を提案した。これが今日チューリング機械と呼ばれているものである。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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