ティマイオス
Timaios
前4~前3世紀の古代ギリシアの歴史記述家。生没年不詳。シチリア島東部のタウロメニオン(現,タオルミナ)に生まれ,アテナイで活躍した。シチリア島史ならびに西地中海史,初期ローマ史をオリュンピア祝典暦という一つの年代構成の枠でとらえる包括的記述を完成した。その文体については修辞性が過度であることなどが,後世の歴史家ポリュビオスによって批判されているが,キケロなどローマの文人たちはティマイオスをローマ史の祖と仰いでいる。38巻をこえたというその労作も今は断片的に伝存するにすぎない。なお,プラトンの対話編《ティマイオス》に登場する人物ティマイオス(前5~前4世紀)は,南イタリア,ロクリス出身のピタゴラス学派の哲学者で,同名のまったく異人である。
執筆者:久保 正彰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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ティマイオス
Timaios
プラトン後期の対話編。プラトンと同時代のピタゴラス派の哲学者ロクロイのティマイオスが主たる話者として登場する。主題は宇宙生成論で,プラトン唯一の自然哲学的著作として中世を通じてきわめて影響力があった。ティマイオスの語るミュトスは,創造者 (デミウルゴス) としての神が,混沌 (カオス) に秩序を与え,イデアを範型 (パラディグマ) として可視的世界を実現させたことを伝えている。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内のティマイオスの言及
【カルキディウス】より
…年代についても,研究者により4世紀から5世紀前半までの振幅がみられる。プラトンの《ティマイオス》の前半(52章)までのラテン語訳と注解とが彼の著書として伝存。これは,12世紀,ヘンリクス・アリスティップスHenrichus Aristippusによる《メノン》《ファイドン》のラテン語訳があらわれるまで,西方世界におけるほとんど唯一のプラトンに関する知識の源泉としての意義を有し,12世紀の[シャルトル学派]の宇宙論に多大の影響を及ぼした。…
【ギリシア哲学】より
…彼に言わせると,ほかならぬプラトンも例外ではなかった。プラトンの《ティマイオス》では,人間の知的魂も知られるものの方もともに同様な〈構成要素〉,あるいは〈究極的な原理〉からできていると見ることができる。両者ともに生成変化する要素と生成変化しないイデア的要素との合成からできているのである。…
【哲学の慰め】より
…5巻からなり,全体は韻文と散文とを交互に配した〈メニッポス風〉という形式にのっとって著されている。顕職から一挙に囚人の身となり,悲運をかこつ彼が提起するさまざまな問いに対し,女神に寓意化された〈哲学〉が答える体裁がとられており,プラトンの《ティマイオス》の新プラトン主義的解釈を軸に,神と世界との関連が主題とされる。そして,悲運の嘆きは真の自己の忘却によるものであって,変転きわまりない現世への執着をたち切り,〈最高善〉〈永遠の形相〉〈世界の第一原因〉としての神へと還帰することの必要が説かれ,これはまた自己認識の過程にほかならないことが主張される。…
※「ティマイオス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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