公共dēmios(<dēmos(国家,市民))のために働く者ergatēs(<ergon(仕事))を意味する古典ギリシア語。農業以外の部門の活動(ただし自家消費目的を除く)で生活の糧を得る者を指し(事実,一時期のアッティカで,土地所有貴族,農民に続く第三身分を構成),金属工,陶工,石工などから,占者,医者,楽人,伝令に至る独立職業人を含んでいた。その他この語は,都市国家(ポリス)の役員の名称となり,その地位は,最高職のアルコンにはじまり,国家ごとに上下さまざまであった。
上記の職業人がなぜ公共奉仕者を意味するデミウルゴスの名で呼ばれるようになったかについては,ギリシア人原初共同体を想定し,そこにデミウルゴス本来の社会的機能(公共奉仕)を位置づけ,社会的分化の結果として職人デミウルゴス,役員デミウルゴスが出現したと説く解釈や,インドのように村抱えの隷属職人をもたないギリシア都市国家が,その軍事的需要を調達するために組織した,特定の対国家奉仕義務(ライトゥルギー)を負わされた団体(ローマのファブリのごとき)にその起源を求める解釈がある。なお,プラトン哲学では原素材(ヒュレ)から世界を創る建築者としての神を,さらにグノーシス主義では悪しき被造世界の創造者を意味するにいたり,〈造物主〉との訳語があてられることもある。
執筆者:渡辺 金一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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