トゲネズミ(読み)とげねずみ(英語表記)spine rat

改訂新版 世界大百科事典 「トゲネズミ」の意味・わかりやすい解説

トゲネズミ (棘鼠)
Ryukyu spiny rat
Tokudaia osimensis

体にトゲをもつネズミで,齧歯(げつし)目ネズミ科ネズミ亜科に属する。リュウキュウトゲネズミともいう。南西諸島奄美大島徳之島および沖縄本島にだけ分布する。体長12.5~17.5cm,尾長10~12.5cm,体重90~120g。アカネズミに似るが,体はずんぐりと丸く,四肢や尾が短い。橙色の体毛に暗灰色の針状毛を混生し,体は橙褐色に見える。針状毛は長さ2cmほどで,硬く先が鋭く,中央は扁平で幅が広い。奄美大島では湯湾岳山頂付近の草原ややぶ,森林などにすみ,日中は地中の穴に潜んでいる。沖縄本島では北部の山地にすみ,高さ3mほどの灌木林の茂った下ばえの中で生活する。シイの実などが主食らしく,飼育下ではリンゴなどの果実を好んで食べる。1933年に発見された1属1種の世界的珍種で,臼歯(きゆうし)の構造などはアカネズミに類似するため,アカネズミ類の祖先にあたるようだともいわれる。イエネズミの侵入により生息数が激減し,絶滅の恐れがある。天然記念物。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トゲネズミ」の意味・わかりやすい解説

トゲネズミ
とげねずみ / 棘鼠
spine rat
[学] Tokudaia osimensis

哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目ネズミ科の動物。日本固有種で、奄美大島(あまみおおしま)と徳之島にアマミトゲネズミ、沖縄本島にオキナワトゲネズミという亜種があり、ともに森林にのみ生息する。最初の発見は1924年(大正13)で、9年後の1933年(昭和8)にクマネズミ属Rattusに編入された。しかしインドトゲネズミR. jerdoniやタイワントゲネズミR. coxingaと分類的にかなり異なることから、その後独立種とされた。頭胴長10~15センチメートル。尾を除く全身に、扁平(へんぺい)で先が鋭い針状毛が密生する。夜行性で、日中は岩の下の巣穴に潜む。食物昆虫やシイの実が多い。繁殖期は10~12月で、1~7匹の子を産む。跳躍力に優れ、ハブの攻撃をかわす。国の天然記念物であるが、絶滅が心配されるほど少なくはない。

[林 良博]


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