日本大百科全書(ニッポニカ) 「トリメロフィトン類」の意味・わかりやすい解説
トリメロフィトン類
とりめろふぃとんるい
trimerophytes
古生代デボン紀のシダ植物で、リニア類から分化し、デボン紀以降の大葉系維管束植物の祖先となった植物群。単純な立体二叉(にさ)分枝をするリニア類とは異なり、二叉分枝だけでなく三叉分枝や単軸分枝(主軸と側軸という強弱の違いがはっきりした分枝)がみられ、胞子嚢(のう)を頂生する軸は集合して胞子嚢群をつくる傾向が顕著である。また側軸は平面に展開する傾向がある。これは、分枝する葉脈をもつ大葉系の葉が形成される初期段階と考えられている。軸はリニア類よりも複雑化した原生中心柱をもつが、二次肥大成長はしない。トリメロフィトン類からはデボン紀の間に、楔葉(けつよう)類(トクサ類)、シダ類、前裸子植物が分化し、前裸子植物からさらに種子植物が出現した。トリメロフィトン類には、トリメロフィトンTrimerophyton、プシロフィトンPsilophyton、ペルティカPerticaなどがある。
トリメロフィトン類と並んでデボン紀の維管束植物を代表する群にゾステロフィルム類Zosterophyllsがある。ゾステロフィルム類は小葉をもつヒカゲノカズラ類の祖先群と考えられている。維管束植物の基本的な分化は、デボン紀に完了したといえる。
[西田治文]
『岩槻邦男・馬渡峻輔監修、加藤雅啓編『バイオディバーシティ・シリーズ2 植物の多様性と系統』(1997・裳華房)』▽『西田治文著『植物のたどってきた道』(1998・日本放送出版協会)』▽『岩槻邦男・加藤雅啓編『多様性の植物学2 植物の系統』(2000・東京大学出版会)』