リニア類(読み)りにあるい(その他表記)rhyniophytes

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リニア類」の意味・わかりやすい解説

リニア類
りにあるい
rhyniophytes

古生代シルル紀からデボン紀前期にみられた最初期陸上植物群。その後のすべての陸上植物の祖先群だと考えられている。ライニア類ともよばれる。胞子体は、(1)根・茎・葉の体制分化がみられず、(2)立体二叉(にさ)分枝する裸の軸からなり、(3)地上部の各軸の先端に胞子嚢(のう)が1個ずつつき、(4)軸は中央の小さな維管束のみからなる原生中心柱をもつ、などの共通した体制をもつ。知られる限り最古のものはシルル紀のクックソニアCooksoniaであるが、リニア類の多くは、スコットランドアバディーンのライニーRhynie付近に発達した厚さ2.5メートルのライニーチャートに含まれる植物群として知られる。このライニー植物群は、デボン紀中期の湿地泥炭が堆積(たいせき)し、植物体ごと珪(けい)化して保存されたもので、リニア・マヨルRhynia major、リニア・ギンボニイR. gwynne-vaughaniホルネオフィトン・リグニエリHorneophyton lignieriアステロキシロン・マッキエイAsteroxylon mackieiなどを産する。このうち、維管束植物ヒカゲノカズラ類に属する特徴をもつアステロキシロン以外はリニア類の特徴をもつ。

 リニア類は世界各地のデボン紀層を中心にみつかるが、現在では複数の系統からなる多系統群であると理解されている。その理由は、リニア類のなかに系統の違いを示すような形態の多様性がみつかっていることである。たとえば、通道組織の構造を比較すると、リニア・ギンボニイは現在の維管束植物に似た型の仮道管をもつのに対して、クックソニア、リニア・マヨル、ホルネオフィトンの通道組織は現在のコケ植物にみられる通道組織に似ている。このため、リニア・マヨルは、現在アグラオフィトン・マヨルとして別属に分類され、維管束植物とは直接関係がないともいわれている。しかし、コケのような通道組織と仮道管との関係もまだよくわかっておらず、リニア類の実体は現在も研究途上にある。このように、リニア類は維管束植物だけでなく、コケ植物の祖先や、さらに維管束植物でもコケ植物でもない絶滅した分類群さえ含む可能性のある多様な集合であると考えられる。リニア類の配偶体もいろいろみつかっており、たとえば、リオノフィトンLyonophytonはアグラオフィトンの配偶体だと考えられている。これらの配偶体の構造は、現在のシダ植物やコケ植物の配偶体とさまざまな点で異なっており、初期の陸上植物の進化を明らかにするうえでさらに研究が必要とされている。

 リニア類のような単純な体制から、維管束植物に一般的にみられる根・茎・葉のある、より複雑な体制に進化したのは、デボン紀後期から石炭紀である。

[西田治文]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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