維管束植物(読み)イカンソクショクブツ

世界大百科事典 第2版の解説

いかんそくしょくぶつ【維管束植物 vascular plant】

体内に維管束をもつ植物群の総称で,シダ植物,裸子植物および被子植物を含む。ド・カンドルA.P.de Candleが1813年に非管束植物cellularesと対比させて用いたが,そちらの方は流布しなかった。しばしば高等植物と呼ばれることがある。 かつて,植物界を花の有無によって顕花植物隠花植物に二分する分類法があった(ブロニャールA.Brongniart,1843)。比較器官学の立場から花は〈頂に胞子葉が密生したもの〉と定義づけられるので,隠花植物に属するシダ植物の中にも一種の花を咲かせるものがあることになる(例,ヒカゲノカズラ,トクサ)。

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大辞林 第三版の解説

いかんそくしょくぶつ【維管束植物】

維管束をもつ植物群。種子植物とシダ植物とがこれに属する。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

維管束植物
いかんそくしょくぶつ

維管束をもった植物群のことで、管束植物ともいう。緑色植物のなかで、シダ植物には花とよばれるはっきりした器官がなく、種子を生じないので、普通は種子植物とは区別されるが、ともに陸上生活に適した体制として、よく発達した維管束をもつので、これを一つにまとめて扱おうとする分類群である。スイスの植物学者ド・カンドルA. P. de Candolle(1778―1841)が『植物学基本』(1813)で初めて提唱し、植物界を二つに大別した。その方法は、シダ植物と種子植物を維管束植物Vascularesとし、コケ植物、菌類、藻類、地衣類を細胞植物Cellularesにまとめるものであった。しかしコケ植物にも茎とがあり、茎の中心部には維管束に相当する細長い細胞群(道束)がみられ、一応陸上生活に適した体制をもつと考えられるが、シダ植物以上の高等植物に比較して、まだその分化の程度は低く、維管束植物とはいえない。維管束植物では、有性世代と無性世代の交代する生活環がみられ、とくに無性世代はよく発達して、葉と茎がはっきり分化した地上部をもっている。胞子は葉に生じるが、種子植物では胞子葉としての特別な働きをもつようになり、小胞子葉として雄ずい、大胞子葉として雌ずいが分化し、これが集まって花をつくる。配偶体を生じる有性世代は極端に小さく、無性世代に寄生する。一方の細胞植物は異なった分類群を含むので、扱いに問題はあるが、維管束植物は系統分類上のまとまりがあり、シダ植物、裸子植物、被子植物を一括して扱うときには便利なので、よく用いられる。[杉山明子]

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世界大百科事典内の維管束植物の言及

【維管束】より

…シダ植物および種子植物の茎・根・葉などの器官の内部を貫く条束状の組織系。これらの植物はそのため維管束植物と呼ばれ,維管束をもたないコケ植物や藻類などと区別される。陸上植物は水中生活をしていた緑藻類のあるものが地上に侵出して進化したものであると一般に考えられ,最も古い維管束植物は4億年前の地層から出土している。…

【茎葉植物】より

…彼はコケ植物中の蘚類,シダ植物,裸子植物,被子植物を含めた。ここから蘚類を除けば,すべて真の茎と葉があり,維管束が分化しているので,この群に対しては維管束植物と呼ぶことができる。コケ植物のうち,苔類を葉状植物に入れ,蘚類を茎葉植物とするのは不自然である。…

【高等植物】より

…とくに定着した定義があるわけではない。ふつうはほぼ維管束植物の同義語として用いられる。ときには顕花植物または種子植物だけをさしていう場合もある。…

【植物】より

…古生代から中生代にかけて栄えた群で,現生は5~7属約1000種。維管束植物は単元的に進化してきたと考えられていたが,葉の系統発生などに指標されるように,小葉植物は大葉性の植物と別の系統に属することがわかってきた。植物が陸上に進出してきたのは約4億年前のシルル紀のことである。…

※「維管束植物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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