改訂新版 世界大百科事典 「ドドナ」の意味・わかりやすい解説
ドドナ
Dōdōna
古代ギリシア西部のエペイロス地方にあったゼウスの神託所。トマロス山麓の比較的緑豊かな谷間にあり,デルフォイとともに多くの神託伺の人々を集めた。ギリシア最古の神託所で,《イーリアス》第16巻に初めて言及されている。初期には神託はオークの木から出され,セロイと呼ばれる男たちによって伝えられたことになっているが,古典期には〈鳩〉と呼ばれる巫女たちによって伝えられた。神託伺の人々は鉛板に質問を記し,巫女にゆだねたといわれ,その鉛板多数が出土している。ポリスによる公的な質問もあるが,多くは私人によるもので,彼らが抱えていた家庭内の,あるいは職業上の問題を伝えている。ピュロス王の治世にここは王国の宗教上の中心地となるが,前219年アイトリア人により破壊され,のち再建されるが,前167年のローマの攻略後の復興は達成されなかった。遺跡の本格的発掘は20世紀半ばから行われ,ピュロス王時代の壮大な劇場が1963年に再建された。現在のドドニ村は遺跡のやや西方に位置する。
執筆者:桜井 万里子
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