桜井(読み)サクライ

デジタル大辞泉 「桜井」の意味・読み・例文・類語

さくらい【桜井】[地名]

奈良県中北部の市。市場町宿場町として発展。木材の集散地三輪みわそうめんの産地。山田寺跡・談山神社など、史跡が多く、大神おおみわ神社もある。人口6.0万(2010)。
大阪府北東端、三島郡島本町にある地名。延元元年=建武3年(1336)、楠木正成くすのきまさしげ正行まさつら父子の決別の地。

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精選版 日本国語大辞典 「桜井」の意味・読み・例文・類語

さくらいさくらゐ【桜井】

  1. [ 一 ] 奈良県中部の地名。奈良盆地の南東部にある。市場町、宿場町として発展。木材の集散地で製材所が多い。JR桜井線、近鉄大阪線が通じる。山田寺跡、談山神社などの史跡に富む。昭和三一年(一九五六)市制。
  2. [ 二 ] 大阪府三島郡島本町の地名。昔は西国街道の宿駅で、楠正成(くすのきまさしげ)・正行(まさつら)父子の訣別(けつべつ)の地として知られる。
  3. [ 三 ] 謡曲。四番目物。廃曲。楠正成は足利尊氏追討の宣旨を受けて兵庫に向かう途中、桜井の里で子の正行を諭して故郷に帰らせる。廃曲。

さくらいさくらゐ【桜井】

  1. 姓氏の一つ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「桜井」の意味・わかりやすい解説

桜井(市)
さくらい

奈良県北部、奈良盆地南東部に位置する都市。1956年(昭和31)桜井町が大福(だいふく)、香久山(かぐやま)の2村を編入して市制施行。同年上之郷(かみのごう)村、1959年初瀬(はせ)町、1963年大三輪(おおみわ)町を編入。JR桜井線、近畿日本鉄道大阪線、国道165号、166号、169号が通じる交通の要地である。大和(やまと)川上流の初瀬川流域、大和川支流の寺川流域の盆地部は水田地帯。北東部は大和高原、南東部は竜門(りゅうもん)山地の一部で、山地には農山村が散在する。行政、経済の中心地は桜井地区で、寺川が平野に流出する地にあり、中世から市場町、また伊勢(いせ)街道(初瀬街道)に沿う宿場町として発達した。明治以降は木材集散地としても発展し、2014年時点で、家具をのぞく木材・木製品製造業は106事業所、約430人が従業している。「浜(はま)」とよばれる木材市場では木材取引が盛んに行われる。特産に三輪(みわ)そうめんや北部山地での穴師(あなし)ミカンなどがある。また、皮革製品やスポーツ用品も製造する。

 古代大和文化の発祥地の一つで、特別史跡の文殊院(もんじゅいん)西古墳をはじめ、おびただしい古墳がある。主要遺跡の出土品を紹介する埋蔵文化財センターがある。また山田寺跡(特別史跡)、粟原寺(おうばらでら)跡などの史跡や、国宝木心乾漆十一面観音立像で知られ、安産と子授けの信仰を集める聖林寺(しょうりんじ)、日本三大文殊の一つ安倍文殊院(あべもんじゅいん)、藤原鎌足(かまたり)を祀(まつ)る多武峰談山(とうのみねだんざん)神社などの古社寺が多い。大神(おおみわ)神社の神体でもある三輪山南麓(なんろく)の金屋(かなや)には「金屋の石仏」(石板浮彫伝弥勒如来像・石板浮彫伝釈迦如来像。国指定重要文化財)がある。金屋はまた古代の市(いち)の海柘榴市(つばいち)の地という。伊勢街道の宿場初瀬は長谷寺(はせでら)の門前町でもあり、初瀬の与喜山(よきさん)暖帯林は国指定天然記念物である。2004年(平成16)長谷寺の本堂が国宝に指定された。三輪山麓の山辺の道(やまのべのみち)や磐余道(いわれのみち)に沿って小林秀雄などの揮毫(きごう)による記紀や『万葉集』の歌碑が立つ。訪れる観光客は年間延べ700万人を超える(2015)。面積98.91平方キロメートル、人口5万4857(2020)。

[菊地一郎]

『乾健治他編『桜井市文化叢書』2巻(1958、1961・桜井市)』『『桜井市史』2巻(1979、1981・桜井市)』



桜井(愛媛県)
さくらい

愛媛県中央部、今治(いまばり)市の一地区。旧桜井町。『和名抄(わみょうしょう)』の桜井郷の地で、伊予国分尼寺塔跡(県指定史跡)がある。江戸時代には漆器を製造し、これを舟で行商するようになった。椀舟(わんぶね)とよばれる行商は分割払いを用いて伊予行商の中心となり、のちに全国的に知られる伊予割賦(かっぷ)販売のもととなった。小規模な海水浴場と綱敷天満(つなしきてんまん)神社があり、志島ヶ原は国指定名勝となっている。国道196号が通じ、JR予讃線伊予桜井駅がある。

[横山昭市]


桜井(愛知県)
さくらい

愛知県安城市(あんじょうし)南東部の地区。旧桜井町。名古屋鉄道西尾線が通じる。国の史跡二子(ふたご)古墳、姫小川(ひめおがわ)古墳をはじめ、多くの古墳があり、桜井古墳群を形成、古代西三河(にしみかわ)地方の政治の中心地と推定されている。

[編集部]

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改訂新版 世界大百科事典 「桜井」の意味・わかりやすい解説

桜井[市] (さくらい)

奈良県中北部,奈良盆地南東部の市。1956年桜井町に大福,香久山の2村を編入,市制。人口6万0146(2010)。旧桜井町は初瀬川の谷口に位置し,古くから初瀬谷,宇陀山地,竜門山地を後背地として発展した市場町であった。1893年桜井~高田間に鉄道(現,JR桜井線)が開通し,大阪への鉄道輸送が可能となったことから,山地からの木材の集散地として注目をあび,特に第2次世界大戦後に飛躍的な発展を遂げた。今日も桜井市は製材業,木工業など,木材関係の事業所数が総事業所数の約半分を占めている。ほかには食品,繊維関係などの工場がある。特産としては北部の三輪周辺のそうめんがある。農業では鉢物やキュウリの生産が多い。1956年に完成した倉橋池は奈良盆地の溜池灌漑に大きな役割を果たしている。桜井は古代の磐余(いわれ)の地で,崇峻・舒明両天皇陵,歴代の天皇の宮跡,古代の市として有名な金屋の海柘榴市(つばいち)など,古代の史跡が多い。また端整な三輪山(467m)を神体とする大神(おおみわ)神社,中世以来初瀬(長谷)詣で有名な長谷寺,〈知恵の文殊さん〉として親しまれている安倍寺,藤原鎌足を祭神とする談山神社,国宝の十一面観音立像で有名な聖林(しようりん)寺などの由緒ある寺社も多い。近鉄大阪線が通る。
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百科事典マイペディア 「桜井」の意味・わかりやすい解説

桜井[市]【さくらい】

奈良県北部の市。1956年市制。中心市街は奈良盆地南東部にあり,近世は市場町,明治に桜井線が通じて木材集散地として発展。近鉄大阪線も通じる。宇陀山地,吉野地方の木材を集散し,製材・木工業などが第2次大戦後飛躍的に発展。農業は野菜・花卉(かき)・ミカン栽培。三輪そうめんサンダルグローブを特産。三輪山大神(おおみわ)神社多武峰(とうのみね)と談山神社,文殊院と文殊院西古墳(特別史跡),茶臼(ちゃうす)山古墳,初瀬(はせ)の長谷寺巻向山,山田寺跡(特別史跡)など史跡,古墳,名所が多い。98.91km2。6万146人(2010)。
→関連項目三輪

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「桜井」の意味・わかりやすい解説

桜井
さくらい

愛媛県北部,今治市南部の地区。旧町名。 1955年今治市に編入。古代伊予国の政治,文化の中心地として栄え,唐子山周辺などには多くの古墳のほか,国分寺跡国分尼寺跡条里制の遺構が残る。漆器の産地としても有名で,文化年間 (1804~18) に行商人が紀伊黒江,能登輪島から技術を導入した。燧灘に面する白砂青松の桜井海岸,名勝志島ヶ原は海水浴場として有名。付近一帯は瀬戸内海国立公園に属する。

桜井
さくらい

富山県北東部,黒部市北西部の旧町域。 1940年三日市町,石田村,田家村,村椿村,大布施村,前沢村,荻生村,若栗村が合体して桜井町が成立。 1954年生地町と合体して黒部市となった。地名は謡曲『鉢木』で有名な三庄の一つ,桜井庄がこの地にあったと伝えられることによる。

桜井
さくらい

大阪府北東部,島本町南西部の地区。かつては西国街道沿いの交通の要地。史跡の桜井駅跡があり,延元1 (1336) 年南朝の武将楠木正成が,湊川出陣にあたり,その子正行をここより河内に帰した決別の地として有名。現在は小公園となり,碑が建っている。

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デジタル大辞泉プラス 「桜井」の解説

桜井

鈴江俊郎による戯曲。初演は劇団八時半および創造集団アノニム(1993年)。1994年、第38回岸田国士戯曲賞の候補作品となる。

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世界大百科事典(旧版)内の桜井の言及

【今治[市]】より

…古代以来,瀬戸内海航路の要地で,国分古墳はじめ古墳も多い。伊予国府は南郊の富田に,また国分寺が国分に置かれ,近世初期まで桜井地区が当地の中心であった。1600年(慶長5)領主となった藤堂高虎は桜井の国府城に入ったが,02年から砂州を埋め,三重の堀をうがって海水を引き,現在地に今張城を築いた(石垣と内堀のみ残す)。…

【楠木正行】より

…正成の子。1336年(延元1∥建武3)正成が摂津国湊川に出陣するに際し,桜井駅(摂津国三島郡)で正行と別れたと《太平記》は記すが,史実は未詳。正成戦死後,正行は楠木氏の本拠南河内で成長したとみられるが,47年南朝軍の中心として,河内国藤井寺,摂津国住吉・天王寺などで,幕府方山名時氏,細川顕氏らの軍を破った。…

※「桜井」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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