ナンシー(フランス)(読み)なんしー(英語表記)Nancy

翻訳|Nancy

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナンシー(フランス)」の意味・わかりやすい解説

ナンシー(フランス)
なんしー
Nancy

フランス北東部、ムルト・エ・モーゼル県の県都。パリの東306キロメートルにある。モーゼル川の支流ムルト川が市の東部を北流し、マルヌ・ライン運河が通じる。人口10万3605(1999)、10万5162(2015センサス)。ロレーヌ地方の中心都市で、第三次産業が卓越し、同地方の行政、商業、金融、文化、司法、宗教の中心地。旧市街には中世繁栄をいまに伝えるクラッフェ門(15世紀)、コルデリエール教会(15世紀)、旧公国宮殿(16世紀)、スタニスラス広場などが残り、観光地としてもにぎわう。またロレーヌ工業地帯の主要都市で、機械、電気、織物、食料品、靴、印刷、ガラス製品など多種の工業が発達する。道路、鉄道、空港があり、交通の要衝ともなっている。

[大嶽幸彦]

歴史

13世紀からドイツ帝国領ロレーヌ(ロートリンゲン)の首都として栄えた。16世紀なかばにロレーヌが帝国領から独立すると、その後フランスはしばしば侵攻を繰り返し、首都はリュネビルに移された。18世紀なかばにポーランド人で国王ルイ15世の義父スタニスワフ1世Stanisław Ⅰ Leszczyński(1677―1766)の治政のもとで大規模な都市開発が行われ、近代的な美観の都市に生まれ変わった。1766年にフランスに併合された。プロイセン・フランス戦争後、ムルト・エ・モーゼル県の県庁所在地になるとともに、多数のアルザス人が移住して経済都市として発展するようになった。第一次世界大戦では対独戦略基地となり、フランス軍はナンシーを西に見下ろす高地グラン・クロネの激戦で、ドイツ軍を撃退して占領を免れた。第二次世界大戦ではドイツ軍の占領下に置かれ、1944年9月アメリカ軍によって解放された。

[本池 立]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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