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脱構築 だつこうちくdéconstruction(仏)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

脱構築
だつこうちく
déconstruction(仏)

J.デリダの用語。デリダ自身の定義によると,「哲学者の通った道をそのままたどり,そのやり口を理解し,その詭計 (きけい) を借り,その持ち札で勝負し,思うがままに策略を繰り広げさせておいて,実はテクストを横領してしまう」戦略。ヨーロッパの形而 (けいじ) 上学の基礎概念を作り上げた諸構造,すなわち「ロゴス中心的,音声中心的,男根中心的」哲学の言説,「現前形而上学」を解体し再構築する意味をもっている。プラトン以来の「存在とは『恒常的現前』である」とする形而上学では,時間の一様態としての「現在」を出発点として考えることにより,「過去」も「未来」もその一変様として理解されてしまい,最終的には G.ヘーゲルにおけるように,すべての差異性は解消され,時間性は失われ,絶対知が表れてしまう。世界は永遠不変の真理=ロゴスによって成立することになる。しかしこうした存在了解は,一つの解釈にすぎず,世界はすでに解釈されたテキストとして現前するにすぎない。脱構築とは,まさにこのテキストの連鎖を自由に横断し,そのずれの中に世界の生成の瞬間を見いだそうとする,無限に反復される試みである。

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知恵蔵の解説

脱構築

フランスのポストモダンの哲学者デリダの用語。同じ著者のテキストのなかに、なんらかの絶対な真理を打ち立てようとする傾向と、反対に絶対な真理を解体しようとする傾向との、2つを同時に読み取っていくことをいう。脱構築的読解とも呼ばれる。デリダは、プラトンやフッサールなどの哲学者のテキストを詳細に読解しつつ、彼らが真理を打ち立てようと意図しながら、しかしその不可能性を自ら暴露してしまっていることを示していった(『声と現象』〈1967年〉など)。そこには「絶対の真理とされるものは、真理ならざるものを排除することによって成り立つが、完全な排除は不可能である。なぜなら、真理は真理ならざるものと深くかかわりあい、それによって汚染されているからだ」という考えがあった。デリダのように、唯一絶対の真理とされるものを批判し解体しようとする思想は、広く「形而上学批判」と呼ばれ、19世紀末のニーチェや20世紀半ばのハイデガーに始まるが、とくに20世紀後半に盛んになった。その背景には、マルクス主義の運動のなかで、絶対の真理や正義の名のもとで政治党派が互いに殺し合い反対者を大量に粛正したという事情があった。「真理の名におけるテロル」はいまなお、現代思想の最大のテーマであり続けている。

(西研 哲学者 / 2007年)

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デジタル大辞泉の解説

だつ‐こうちく【脱構築】

《〈フランス〉déconstructionの訳語》西洋哲学で伝統的に用いられる統一的な全体性や二項対立の枠組みを解体し、新たな構築を試みる思考法。フランスの哲学者デリダの用語。デコンストラクション

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百科事典マイペディアの解説

脱構築【だつこうちく】

ディコンストラクションdeconstruction(破壊destructionと構築constructionを合わせた造語)の訳語。フランスの哲学者ジャック・デリダが創始した理論,また,これを受けて1970年代から1980年代にかけて主に米国で盛んになった文学・哲学の理論。
→関連項目ド・マンハートマンブルームポスト構造主義

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大辞林 第三版の解説

だつこうちく【脱構築】

フランスの哲学者デリダの用語。形而上学の仕組みを解体し、その可能性の要素を抽出して再構築を試みる哲学的思考の方法。デコンストラクション。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

脱構築
だつこうちく
deconstruction英語
dconstructionフランス語

「ポスト構造主義」を代表するフランスの思想家ジャック・デリダの中心思想。デコンストラクションともいう。ギリシアのプラトン、アリストテレス以来の西欧形而上(けいじじょう)学の中心テーマは「存在論」であったが、脱構築は、それを解体しようとしたハイデッガーの思想を発展させたものといえる。このデリダの思想はとくにアメリカを中心として世界的に影響を与えている。
 デリダはさまざまな概念装置を用いて、議論を立ち上げている。デリダによれば、形而上学は、「ロゴス中心主義」「音声中心主義」「現前(今、ここにある意味されるもの(シニフィエ)の現前)の哲学」であり、「存在‐神‐論」onto-tho-logieの構造を有し、女性を受動的なものとし支配しようとする「男根中心主義」の性格をもっている。デリダは、こうしたロゴスの支配している「現前の形而上学」を解体しなければならないと主張する。哲学が伝統的に用いる二項対立(暴力的な階層秩序をもち、それらの項のうち一つがつねに他方より高い地位にある)を「脱構築するとは、何よりもまず、とりあえず一度この階層秩序を逆転するということである」(『ポジシオン』)とする。
 つまり「脱構築」の戦略とは、内部と外部、パロール(音声言語)とエクリチュール(文字言語)、魂と肉体などの二項対立の階層秩序を打破し、ずらし、差異を生み出し続けることである。この差異を延ばし続ける運動を、デリダは「差延」diffranceと名づけた。これは「差異」diffrenceからの造語で、発音は同じ「ディフェランス」である。
 脱構築の思想はラディカルである。二項対立を決定不可能なものとすることによって、真と偽、善と悪などは相対化され、何の意味ももたなくなったとしたらどうなるか。デリダの脱構築は、ロゴスや真理への服従から「記号の差延の戯れ」へと向かうことによって、最終的には「ニヒリズム」を包含するものであろう。
 脱構築によるデリダの「テクスト論」は、ロゴス以前の「原エクリチュール」archi-critureをキーワードとする。デリダによれば、テクストの意味は「意味するもの」(シニフィアンsignifiant)と「意味されるもの」(シニフィエsignifi)の「差異の痕跡(こんせき)の戯れ」(=原エクリチュール)であり、これによってテクストの意味の決定は不可能なものとなる。このテクスト論は、とくにアメリカのエール大学を中心とした「デコンストラクションの文学批評」に影響を与えた。ポール・ド・マンPaul De Man(1919―83)は「テクスト批評」ということばを用いて、脱構築批評を目ざした。これは、テクストのみを分析対象とし、ほかの要素は考慮せず、そこから多義的なテクストの読みを探ろうとするものであった。[平野和彦]
『J・デリダ著、若桑毅他訳『エクリチュールと差異』(1977・法政大学出版局) ▽J・デリダ著、足立和浩訳『根源の彼方に――グラマトロジーについて 上・下』(1977、1986・現代思潮社) ▽J・デリダ著、高橋允昭訳『ポジシオン』増補新版(1992・青土社) ▽J・デリダ著、高橋允昭訳『声と現象――フッサール現象学における記号の問題への序論』(1970・理想社) ▽高橋哲哉著『現代思想の冒険者たち28 デリダ』(1998・講談社) ▽カラー著、山本・折島訳『ディコンストラクション』(1985・岩波書店) ▽小阪修平他著『現代思想・入門』(1990・宝島社) ▽キース・A・リーダー著、本橋哲也訳『フランス現代思想』(1994・講談社) ▽久米博著『現代フランス哲学』(1998・新曜社)』

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