日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニシキハナダイ」の意味・わかりやすい解説
ニシキハナダイ
にしきはなだい / 錦花鯛
brocade sea bass
[学] Plectranthias sagamiensis
硬骨魚綱スズキ目ハタ科ハナダイ亜科に属する海水魚。相模(さがみ)湾、伊豆大島、駿河湾(するがわん)、名護湾(なごわん)、チモール海（インドネシア沿岸）などに分布する。体は楕円(だえん)形で、体高は高く、体長は体高の2.3～2.7倍。口は大きく、上顎(じょうがく)の後端は瞳孔(どうこう)の後縁下付近に達する。両眼間隔幅は狭く、眼径のおよそ2分の1。上下両顎の歯は小さく、上顎の先端の各側に1対(つい)、下顎の側面の後部に1本の犬歯がある。鋤骨(じょこつ)（頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨）と口蓋骨に小さい歯の幅狭い歯帯があり、鋤骨では三角形状。舌上には歯がない。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の縁辺は丸く、細かい一様の鋸歯(きょし)があり、下縁に2本の前向きの棘(きょく)がある。間鰓蓋骨と下鰓蓋骨に少数の小さい鋸歯がある。背びれ棘は強くて、第4棘が最長。後方に向かって短くなり、鰭膜(きまく)の先端はわずかに伸長する。臀(しり)びれ棘はじょうぶで、第2棘がもっとも長い。胸びれは大きくて長く、後端は臀びれの起部を越える。すべての鰭条は分枝しない。尾びれの後縁は湾入し、多数の軟条が伸びる。体は櫛鱗(しつりん)で覆われるが、吻(ふん)、主上顎骨、口唇、下顎および喉部(こうぶ)は無鱗。側線有孔鱗数は27～29枚、背びれ起部から側線までに3枚、臀びれ起部から側線までに11枚の鱗(うろこ)が斜めに並ぶ。側線は体の背縁に沿って走り、背びれの後部下で水平になり尾びれ基底に達する。体は赤黄色で、6～8本の白色の不規則な横帯があり、網目状につながる。各鱗の縁辺は濃赤色で、中央部は黄色。上下両顎の先端は赤い。頬(ほお)に大きい黄色斑(はん)がある。目の下縁から前鰓蓋骨の隅角(ぐうかく)部へ黄色の帯状斑が走る。背びれ、尾びれおよび胸びれは赤黄色で、基部に橙(だいだい)色の斑紋がある。臀びれと腹びれは黄色。沿岸の水深50～270メートルの岩礁域や砂礫(されき)底に生息し、釣りや底引網でとれる。最大の体長は60センチメートルほどになる。
［尼岡邦夫 2022年10月20日］