ネットセキュリティー(日本の)(読み)ねっとせきゅりてぃー(にほんの)

知恵蔵 の解説

ネットセキュリティー(日本の)

個人情報流出など、インターネットの利用に伴う、セキュリティー上の脅威についての日本国内の現状と取り組み。情報セキュリティー対策などを推進する、経済産業省外郭団体IPA(情報処理推進機構)」が発表した、2015年の社会的に影響が大きかったセキュリティー上の一番の脅威は、インターネットバンキングやクレジットカード情報の不正利用であり、警察庁発表によると、15年の被害額は過去最悪の30億7300万円に達している。国内では、12年3月に不正アクセス禁止法の改正案が成立し、同年5 月から施行されているが、その後も不正アクセスなどのセキュリティー問題は一向に減る兆しを見せない。15年5月には、外部からの不正アクセスにより、日本年金機構から125万件の個人情報が流出する事件が起こり、16年6月には、JTBの自社サーバーが不正アクセスを受けて678万件以上の個人情報が流出した。どちらの事件も、特定組織や個人を狙って機密情報を盗み取る「標的型攻撃メール」によるものであり、IPAでは、このような標的型による被害拡大防止のため、「標的型攻撃メールの例と見分け方」などの技術レポートを公開したり、一般企業や組織向けに「標的型サイバー攻撃特別相談窓口」を設けたりしている。
国際統計や国別統計の専門サイト「GLOBAL NOTE」によると、15年8月時点での日本のインターネットユーザー数は、世界第5位。しかし、15年10月にインターネット・セキュリティー会社「カスペルスキー(Kaspersky)」が発表した、同社実施の「ネット常識力テスト」では、世界16カ国のうち日本の平均点は最下位だった。更に、15年3月に総務省が公表した「公衆無線LAN利用に関する情報セキュリティー意識調査結果」によると、国内において、公衆無線LAN利用時の脅威に関する対策は、訪日外国人よりも日本人の実施率が極めて低いことが判明している。
IPAでは、ネットセキュリティー意識の向上のため、一般家庭や企業向けに、情報セキュリティー上の様々な脅威への対策をテーマ別に分かりやすく説明した小冊子「IPA対策のしおり」シリーズを同団体のサイトからダウンロードできるようにしている。
なお、20年開催予定の東京オリンピック・パラリンピック競技大会における、サイバーセキュリティー対策の必要性を踏まえ、政府は16年3月31日、サイバーセキュリティ戦略本部の会合において、政府機関や民間企業でサイバー攻撃対策を担う専門人材の育成方針を決めている。

(横田一輝 ICTディレクター/2016年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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