日本大百科全書(ニッポニカ) 「バントゥー系諸族」の意味・わかりやすい解説
バントゥー系諸族
ばんとぅーけいしょぞく
Bantu
アフリカでもっとも広い地域、すなわち西はカメルーンから東はケニアまで、南はコイサン語を話す人々の地域を除いて南アフリカ共和国までの広大な領域で用いられるバントゥー語を話す人々のグループ。バントゥー語で「人々」を意味することばはほぼ共通してbantu(単数はmuntu)であり、この点に印象を受けた白人たちによって「人種」あるいは「種族」を表すために、言語上の一特徴が選ばれたのである。しかし、人種(生物学的身体特徴による分類)と言語そして文化はかならずしも正確に重なるわけではないので、「バントゥー人」という人種が存在するわけではない。また最近では言語学的には「バントゥー語」という範疇(はんちゅう)も用いられなくなってきている。しかし慣用的には、また人類学のなかでも「バントゥー系」という用語は頻繁に用いられる。バントゥー語を話す人々の起源はカメルーンあるいはコンゴ民主共和国(旧ザイール)北西部と考えられ、紀元100~200年前後にはすでに東および南に向かって移動を開始していたと推定される。そのためこの広大な地域に、現在よりはるかに数多く住んでいたと考えられる採集狩猟民のピグミーやサン(いわゆる「ブッシュマン」)が徐々に住む場所を限定されていった。700~800年ころには南アフリカにまで達しており、世界史における民族移動のなかでも注目すべき速度である。バントゥー系の人々がつくった国家としてもっとも初期のものは15世紀のジンバブエのモノモタパ王国、コンゴ(旧ザイール)のコンゴ王国、それより少し遅れてガンダ、アンコーレなどの湖間バントゥーの諸王国がある。バントゥー系諸族のうち人口の多いものは、ルワンダ、ズールー、キクユ、ショナ、コンゴなど。おもに農耕に依存するが、東および南部のグループは牛牧も行う。
[加藤 泰]