改訂新版 世界大百科事典 「パリアッチ」の意味・わかりやすい解説
パリアッチ
Pagliacci
レオンカバロが,1892年自作のイタリア語台本に作曲した2幕の歌劇。同年ミラノでトスカニーニの指揮で初演された。日本語の題名は《道化師》。作曲者が少年時代に身近に発生した実話をもとに書き上げた愛憎劇で,庶民社会の身辺に生ずる喜怒哀楽を簡潔直截,赤裸々に,スリリングに描き出すイタリア・ベリズモ歌劇の代表作として,マスカーニの《カバレリア・ルスティカーナ》と双璧をなす。旅興行を続ける〈コメディア・デラルテ〉一座で女優をつとめる妻の浮気を知った道化役者の座長が,村芝居のさ中,妻が恋人に囁いたと同じ言葉をせりふとして発するのを耳にして,芝居と現実の区別がつかなくなって妻を刺し,客席から飛び出して来た恋人をも殺してしまう。息つくまもなく進行するドラマを色彩豊かなオーケストラがいっそうもり立てる。《鐘の合唱》《鳥の歌》《衣装をつけろ》など名曲も多い。日本初演は1919年ロシア歌劇団による。
執筆者:武石 英夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報