イタリアの作曲家P・マスカーニの一幕オペラ。「田舎(いなか)の騎士道」を意味する同名のG・ベルガの短編小説が発表されたのは1880年であるが、84年には原作者自身の手で戯曲化され、トリノでの初演には名女優E・ドゥーゼがヒロインのサントゥッツァを演じて大成功を収めた。この戯曲からさらにオペラ化(台本タルジョーニ・トツェッティとメナシ)され、90年にローマで初演された。シチリア島を舞台とする恋愛悲劇で、それまでのオペラがもっぱら神話や歴史上の事件を題材としていたのに対し、ここでは同時代の日常生活が生々しく描写されている。これがベリズモ(現実派)・オペラの先駆的作品とよばれるゆえんであり、庶民的な登場人物、叙情と激情を巧みに織り込んだ筋書き、強い印象を与える悲劇的結末によって大衆の喝采(かっさい)を浴びた。なおベリズモ・オペラは、ワーグナーの壮大な楽劇に対するアンチテーゼとして確立されたスタイルであるが、この作品には、語りに近い歌や管弦楽による示導動機など、ワーグナーの影響も多く認められる。日本では1917年(大正6)田谷力三(たやりきぞう)らによって初演された。
[三宅幸夫]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… ベルディとワーグナー以後は,彼らに匹敵するほど偉大なロマン派オペラの作曲家はもはや現れなかった。ドイツではワーグナー風の技法をメルヘンの世界と結びつけたフンパーディンクの《ヘンゼルとグレーテル》があり,イタリアでは,下層市民の生活に題材をとり,なまなましい現実感を盛り上げたマスカーニの《カバレリア・ルスティカーナ》とレオンカバロの《パリアッチ》が現れた。しかし,マスカーニやレオンカバロによるベリズモ(写実主義)オペラの成功は一時的なものにすぎず,18世紀以来イタリアで培われてきたベル・カント唱法の伝統を受け継いで抒情的旋律美の最後の峰を築いたのは,《ラ・ボエーム》や《蝶々夫人》で知られるプッチーニであった。…
…84年退学して旅回りのオペレッタ一座の指揮者となる。88年シチリアの民衆生活に題材をとった一幕オペラ《カバレリア・ルスティカーナCavalleria rusticana》によって,ソンゾーニョ出版社主催のコンクール第1位を受賞。このオペラは大成功を博した90年の初演以来レオンカバロの《パリアッチ》とともに,ベリズモ・オペラの代表作とされる。…
※「カバレリアルスティカーナ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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