ヒト成長ホルモン(読み)ヒトせいちょうホルモン(英語表記)human growth hormone; hGH

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ヒト成長ホルモン
ヒトせいちょうホルモン
human growth hormone; hGH

下垂体前葉で産生され,各組織,器官の成長を促進し,全体として個体の成長を促進させる蛋白質。分子量2万 2000,191個のアミノ酸より成る単鎖の蛋白質。下垂体の異常により背が伸びない下垂体小人症の治療薬として使われている。成長ホルモンは動物により構造が少しずつ違い,生物種特異性が高いため,ヒトには霊長類以上の成長ホルモンしか効果がない。従来小人症の治療にはヒトの死体の下垂体から精製した hGHが使われてきたが,投与を受けた患者が死亡する事故が発生したためその応用が危ぶまれるようになった。遺伝子工学の手法を用いて hGHを大量に生産する方法は,1979年に板倉啓壱らによって開発され,アメリカのジェネンテック社,スウェーデンのカビ ヴェトラム社などが導入し,量産されるようになっている。アメリカでは 81年から,日本でも 86年から下垂体性小人症患者への使用が許された。最近の研究では,hGHは下垂体は正常であるが背の低い人に対し,身長を伸ばす効果があることが認められ,その応用が期待されている。

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百科事典マイペディアの解説

ヒト成長ホルモン【ヒトせいちょうホルモン】

下垂体性小人症など,成長ホルモン分泌不全による低身長症の治療薬。成長ホルモン分泌不全ではないが,慢性腎不全の子どもの40〜60%にも成長発育障害がみられるため,薬の種類によっては,こうした症例にも適用されている。 これまでのヒト成長ホルモンは,死亡した人の脳下垂体から抽出してつくる天然型で,日本では大半を輸入に頼っていた。これに対して,スウェーデンで開発された方法では,人間の脳下垂体から成長ホルモンの遺伝子を取り出して,大腸菌に組み込み,菌の繁殖力を利用して大量生産できる。おかげで供給不足も解消しつつある。 ただし,この方法では天然型と比べてメチオニンというアミノ酸が一つ多く結合してできてしまい,そのままでは医薬品として使えないため,このアミノ酸を酵素で除去しなければならない。1998年6月,武田薬品工業バイオ技術研究所では,これを化学反応によって簡単に取り除く方法を開発した。これを利用すると,酵素を使う場合の半分のコストで済む。

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