日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒメ」の意味・わかりやすい解説
ヒメ
ひめ / 比女
姫
Japanese aulopus
[学] Hime japonica
硬骨魚綱ヒメ目ヒメ科の海水魚。青森県以南の日本海沿岸、青森県八戸(はちのへ)以南から奄美(あまみ)大島の太平洋沿岸、東シナ海、釜山(プサン)、台湾、フィリピン諸島、オーストラリア南東岸、タスマン海、ニュージーランド、ニュー・カレドニアなどの海域に分布する。体は細長く、背びれの起部でもっとも高い。頭の背外郭は目の上方で盛り上がる。目は大きく、眼径は吻長(ふんちょう)より長い。両眼間隔域はやや狭く、くぼむ。上顎(じょうがく)の後端は瞳孔(どうこう)の後縁下に達する。上下両顎の歯は小さく、歯帯を形成する。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)、口蓋骨、舌上に歯がある。全鰓耙(さいは)数は17~25本。鱗(うろこ)は大きく、櫛鱗(しつりん)。側線は鰓孔の上端から尾びれ基底(付け根の部分)までほとんどまっすぐに走る。側線鱗数は40~46枚。背びれ軟条は15~17本あり、前部の軟条は後部の軟条よりも長く伸長しない。小さい脂(あぶら)びれ(背びれの後方にある1個の肉質のひれ)が臀(しり)びれの後部の上方にある。背びれを倒すと後端は脂びれに達する。腹びれの基底は胸びれ基底よりもわずかに後ろにある。尾びれは深く二叉(にさ)する。体の背側面は淡褐色で、4個の暗褐色の鞍状斑(あんじょうはん)がある。第1斑は背びれの前部に、第2斑は背びれの後部に、第3斑は脂びれの下方に、そして第4斑は尾柄(びへい)部の後端にある。体の腹側面は銀白色で、大小の赤色斑が1列に並ぶ。雄では背びれの前部が赤色である。臀びれを除く各ひれには赤色と黄色のまだら模様がある。臀びれは雄には黄色縦帯があるが、雌にはない。水深25~510メートル(多くは125~180メートル)の砂や貝殻混じりの砂底にすみ、小形エビ類、アミ類、二枚貝類などを食べる。土佐湾での産卵期は5~6月、東シナ海では4~6月。卵径は約1.3ミリメートルで、卵膜に大小の亀甲(きっこう)模様がある。後期仔魚(しぎょ)には腹腔(ふくこう)背面の消化管に鞍状の特徴的な黒色素斑がある。全長約20センチメートルに達する。底引網で漁獲され、練り製品の原料として利用される。
従来、本種が属するヒメ属の学名にはAulopusが使われていたが、オーストラリアの魚類研究者のマーティン・ゴモンMartin F. Gomon(1945― )らは形態とDNAの分析結果に基づいて2013年にHimeに変更した。ヒメ属には日本沿岸から3種が知られ、ヒメは背びれ軟条が15本以上あることでイトヒキヒメとハタタテヒメHime sp.に似るが、ヒメは全鰓耙が17本以上あること、雄の背びれが伸長しないことなどで、これら2種と区別できる。
[上野輝彌・尼岡邦夫 2025年10月21日]


