日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェリ磁性体」の意味・わかりやすい解説
フェリ磁性体
ふぇりじせいたい
ferrimagnet
反強磁性スピン構造を変形し、A、Bのスピンの大きさおよび数の均衡を破ったような磁性体( )。その結果、自発磁化を形成するため、強い磁性を生ずる。自発磁化Isの温度変化Is(T)は、A、B両格子のスピンの大きさ、数、またそれらの間に働く超交換相互作用によって、Q、R、P、N型などさまざまな型式に分かれる( )。ことにN型のものは自発磁化がある温度で、その向きを反転するという興味ある変化を示す。自発磁化の失われるキュリー点(キュリー温度)以上では、磁化率の逆数は温度の関数として曲線を描き、高温では漸近線に近づく。漸近線の延長は温度軸を負の側で切る。1948年、フランスのL・ネールによって発見され、亜鉄酸塩ferriteがこの磁性を示す典型的なものであるので、このように名づけられた。
フェライトやガーネット(ざくろ石)は代表的なフェリ磁性体で、前者の多くはR型の、また後者の多くはN型の温度変化を示す。これらはいずれも絶縁体であるため、高周波用磁性材料、バブル磁区装置などに用いられている。
[近角聡信]