フランスの物理学者。ストラスブール大学でワイスに師事し、1945年グルノーブル大学教授、1952年フランス海軍科学顧問、1957年グルノーブル原子核研究所理事、国際純・応用物理学会会長(1963~1966)、ルイ・ド・ブロイ財団理事長(1973~1991)、国立科学研究センター(CNRS:Centre National de la Recherche Scientifique)理事(1979~1983)などを歴任。1930年代に、普通の強磁性体とは異なって、原子磁気モーメントの向きを交互に配列し、巨視的には磁性を現さない物質を発見し、反強磁性体と名づけた。また異なる大きさのモーメントを交互に配列するフェリ磁性体もみいだした。そして、ワイスの分子場の理論を発展させ、これらの物質の磁性を説明した。これらの研究により、磁性体は応用目的に応じた生産が可能となり、新たに焼結されたフェライトは、マイクロ波エレクトロニクスやコンピュータに革命的な進歩をもたらした。研究は、磁区の理論、微粒子磁石などにも及び、岩石中に析出される磁性微粒子の残留磁化の方向から、地球の磁極が移動した歴史を知ることができることを説明した。1970年、反強磁性と強磁性についての基礎的研究により、磁気流体力学を研究したスウェーデンの物理学者アルベーンとともにノーベル物理学賞を受けた。なお、彼は1945年にフランスのグルノーブルで静電気・金属物理学研究所を設立し、その研究所長を務めた。この研究所から1971年に発展的に派生した磁気研究所は、1976年以降、彼のこの分野での功績を記念してルイ・ネール研究所と改名された。
[今野 宏]
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フランスの物理学者。リヨンの生れ。1932年にストラスブール大学で理学博士の学位を取得,37年には同大学理学部の教授となった。P.ワイスに始まる強磁性体の分子磁場の手法を拡張し,反強磁性ならびにフェリ磁性の概念を確立した。反強磁性体の常磁性体への転移温度をネール温度と呼ぶが,これは彼の名にちなむ。70年には,これらの研究によってノーベル物理学賞を受賞した。
執筆者:日野川 静枝
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…これに対する解答は40年代から50年代にかけて提供された。L.ネールは48年フェリ磁性の研究,49年,51年には熱残留磁化の研究を相次いで発表し,理論的な基礎を築き,52年イギリスのブラケットP.M.S.Blackettは非常に弱い磁化まで測定できる高感度無定位磁力計を作りあげた。さらに53年R.A.フィッシャーは測定値のばらつきの程度の統計的な解析方法を示した。…
…この現象はディスアコモデーションdisaccommodationとして知られている。 熱ゆらぎ磁気余効はL.ネールによって提唱されたもので,磁化の回転,または磁壁の移動が熱的なゆらぎで起こり,その緩和過程の緩和時間が非常に長いものから非常に短いものまで広い範囲にわたって連続的に分布をもつとして説明をするものである。単一磁区からなる微粒子の集りと考えられるような強磁性体を例にとってみると,それぞれの微粒子の磁化は異方性エネルギーにより定まる安定な方向(容易磁化方向)のどれかに向いている。…
※「ネール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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