ネール(読み)ねーる(英語表記)Louis-Eugène-Félix Néel

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネール」の意味・わかりやすい解説

ネール
ねーる
Louis-Eugène-Félix Néel
(1904―2000)

フランスの物理学者ストラスブール大学ワイスに師事し、1945年グルノーブル大学教授、1952年フランス海軍科学顧問、1957年グルノーブル原子核研究所理事、国際純・応用物理学会会長(1963~1966)、ルイ・ド・ブロイ財団理事長(1973~1991)、国立科学研究センター(CNRS:Centre National de la Recherche Scientifique)理事(1979~1983)などを歴任。1930年代に、普通の強磁性体とは異なって、原子磁気モーメントの向きを交互に配列し、巨視的には磁性を現さない物質を発見し、反強磁性体と名づけた。また異なる大きさのモーメントを交互に配列するフェリ磁性体もみいだした。そして、ワイスの分子場の理論を発展させ、これらの物質の磁性を説明した。これらの研究により、磁性体は応用目的に応じた生産が可能となり、新たに焼結されたフェライトは、マイクロ波エレクトロニクスコンピュータに革命的な進歩をもたらした。研究は、磁区の理論、微粒子磁石などにも及び、岩石中に析出される磁性微粒子の残留磁化の方向から、地球磁極が移動した歴史を知ることができることを説明した。1970年、反強磁性と強磁性についての基礎的研究により、磁気流体力学を研究したスウェーデンの物理学者アルベーンとともにノーベル物理学賞を受けた。なお、彼は1945年にフランスのグルノーブルで静電気・金属物理学研究所を設立し、その研究所長を務めた。この研究所から1971年に発展的に派生した磁気研究所は、1976年以降、彼のこの分野での功績を記念してルイ・ネール研究所と改名された。

[今野 宏]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ネール」の意味・わかりやすい解説

ネール
Néel, Louis-Eugène-Félix

[生]1904.11.22. リヨン
[没]2000.11.17. ブリーブラガヤルド
フランスの物理学者。パリのエコール・ノルマル・シュペリュール (高等師範学校) を卒業後,ストラスブール大学で P.ワイスの指導のもと金属および合金の磁性を研究。 1937~45年同大学教授,45~76年グルノーブル大学教授,54~76年グルノーブル高等技術研究所所長,56~71年同地の中央原子核研究所所長。 1936年反強磁性の理論,44年磁区の理論,48年フェリ磁性の理論を発表。磁化曲線について,高周波磁場における磁気損失と磁化率,磁気余効などの諸研究がある。彼の研究は固体物理学の理論的発展およびコンピュータの記憶素子の改良など応用面にも,重要な寄与をなした。 70年 H.アルベーンとともにノーベル物理学賞受賞。

ネール
Neer, Aert van der

[生]1603/1604. アムステルダム
[没]1677.11.9. アムステルダム
オランダの風景画家。若い頃ホルケムの名門の家に一時奉公したが,1634年頃生地に帰り終生過ごした。初期の作品にはホルケムの画家 A.ホバエルトや R.カンフェイゼ,ハーグの風景画家エサイアス・ファン・デ・フェルデの影響がみられる。アムステルダム周辺の運河を主題にして,月光を浴びた夜景や冬景色,曙や日没時の景色を好んで描き,独自の風景画の世界を展開した。子のエフロ・ヘンドリック・ファン・デル・ネール (1634~1703) はガブリエル・メッツ風の風俗画家として知られる。

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