ブタインフルエンザ(読み)ぶたいんふるえんざ(英語表記)Swine influenza/ influenza A(H1N1)/Swine-origin influenza A

知恵蔵 「ブタインフルエンザ」の解説

ブタインフルエンザ

ブタインフルエンザとは、ブタインフルエンザA型ウイルスによって引き起こされる、ブタの急性呼吸器疾患である。ブタインフルエンザA型ウイルスには、ブタH1N1、H1N2、H3N1、H3N2など、いくつかの亜型があるが、ほとんどの場合、H1N1亜型である。また、ブタは鳥類インフルエンザウイルスヒトの季節性のインフルエンザウイルスにも感染する。通常は、ヒトには感染せず、感染した場合でも軽症であるとされているが、感染した場合は、鳥インフルエンザと同様にヒトでの免疫がないため、爆発的に感染が広がり、健康被害だけでなく社会的に大きな影響を与えることになる。このように、動物のインフルエンザウイルスが遺伝子変異などによってヒトの体内で増殖できるようになり、新たにヒトからヒトに伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザを「新型インフルエンザ」という。世界保健機関(WHO)では、鳥インフルエンザ(H5N1型)による新型インフルエンザを想定し、1~6までのフェーズ(警戒段階)を設けるなど、発生に備えていた。
しかし、2009年4月、メキシコ米国等でのブタインフルエンザ(H1N1型)による新型インフルエンザの発生を受け、フェーズ3(動物間、動物とヒトの間の一時的な感染)からフェーズ4(ヒト―ヒトの感染が地域レベルで続く)、さらにフェーズ5(ヒト―ヒトの感染が、WHOが決める地域内の2カ国以上で続く)に引き上げられている。これは、パンデミック(複数の地域にまたがる世界的な大流行)の一歩手前の状況である。なお、WHOは09年4月30日に、食肉産業に及ぼす影響などに配慮し、「ブタインフルエンザ」の呼称を「インフルエンザA型(H1N1)」に変更すると発表した。なお、日本政府は、フェーズ4への引き上げを機に、既に「ブタインフルエンザ」から「新型インフルエンザ」に呼称を変えている。政府では、即日、麻生首相を本部長とする新型インフルエンザ対策本部を設置し、発生国からの入国者の強制的な検疫の実施等の水際対策に万全を期すとともに、国内での患者発生を想定した新たな「基本的対処方針」を決定するなどの対策を進めている。

(小林千佳子 フリーライター / 2009年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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