ヘリカメムシ(その他表記)coreid bug

改訂新版 世界大百科事典 「ヘリカメムシ」の意味・わかりやすい解説

ヘリカメムシ (縁亀虫)
coreid bug

半翅目ヘリカメムシ科Coreidae昆虫総称,またはそのうちの1種を指す。小型から大型のものまである。触角が4節で頭部側縁(側方から見て複眼の中央と頭頂を結ぶ縁より上)から出るのでこの名がある。前胸背側の角はときに前方に突出したり,とげ状となったりする。腹部側縁は広く広がる種類も多い。膜質の翅脈は細かく網状となる。肢の後腿節はときに太くとげをもったり扁平化したりする。世界に約1800種,日本からは55種(後述のホソヘリカメムシ科,ヒメカメムシ科を含む)が知られる。

 ヘリカメムシCoreus marginatus orientalis体長12~16mmで,全体は暗赤色で黒い細点刻を散布する。原種はヨーロッパにふつうで日本では北海道や本州山地分布し,キク科植物やダイコンソウにつく。オオヘリカメMolipteryx fuliginosaは体長22~25mmの大型種で,全体は黒褐色から褐色。前胸背側角は葉片状に前方に突出し,雌の後腿節は太い。日本全国にふつうで,アザミにつく。マメ類害虫ホソヘリカメムシ属RiptortusクモヘリカメムシLeptocorisaは近年ヘリカメムシ科から独立させ,ホソヘリカメムシ科Alydidaeとされることが多く,またアカヒメヘリカメRopalus maculatusなどもヒメヘリカメムシ科Ropalidaeとされることが多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘリカメムシ」の意味・わかりやすい解説

ヘリカメムシ
へりかめむし / 縁椿象
縁亀虫
squash bug

昆虫綱半翅(はんし)目異翅亜目ヘリカメムシ科Coreidaeの昆虫の総称、またはそのなかの一種。ヘリカメムシ科の種類は大形から中形で、触角は頭部の側面のやや上方から出て四節からなる。頭頂部には2個の単眼がある。各脚腿節(たいせつ)の先端は棍棒(こんぼう)状となり、半翅鞘(しょう)膜質部には多数の縦脈(7本以上)が走り、膜質部基部で小室を形成しない。腹部の結合板(外縁部)は外方に広がる種が多く、この特徴からヘリカメムシの名がある。

 ヘリカメムシ科の昆虫はすべて植物から吸汁して生活する。農業害虫とされる種は二十数種に及び、ダイズなどマメ科作物に害を与えるホソヘリカメムシ、ホオズキやサツマイモの害虫であるホオズキヘリカメムシ、イネ科植物の花穂に集まるホソハリカメムシ、ダイズやアズキなどマメ科植物に害を与えるアズキヘリカメムシなどが有名である。ヘリカメムシ類は従来ヘリカメムシ科1科として扱われていたが、最近では、頭部、臭腺(しゅうせん)そのほかの特徴から、ヘリカメムシ科(ホオズキヘリカメムシ、ホソハリカメムシなど)、クモヘリカメムシ科Alydidae(クモヘリカメムシなど)、ヒメヘリカメムシ科Rhopalidae(アカヒメヘリカメムシなど)の三つの科に分けられる。

 ヘリカメムシCoreus marginatus orientalisは、体長15ミリ内外で、体全体が赤みの強い褐色で光沢はない。前胸背側縁は多少突出し、腹部結合板は大きく広がる。北海道、本州北部(中部山岳地帯まで)に分布し、また東シベリア、中国、朝鮮半島にも広く産する。キク科植物に寄生する。

[林 正美]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘリカメムシ」の意味・わかりやすい解説

ヘリカメムシ
Coreus marginatus

半翅目異翅亜目ヘリカメムシ科。体長 12~16mm。体は褐色または赤褐色で幅広く,頭部は小さい。触角第1節は太く三角柱状,第2,3節は細く円筒状で,第3節の末端はやや翼状に広がる。前胸背は広く,両側はやや突出するがとがらない。腹部も幅広く,両側 (結合板) は半翅鞘前縁より外側に広く張出す。北海道,本州 (中部山地) ,朝鮮,中国,サハリン,シベリア,ヨーロッパに分布するが,日本をはじめとしたアジア東部に産するものを亜種 C. m. orientalisといい,ヨーロッパ産のものと区別している。ヘリカメムシ科 Coreidaeは,世界に約 1800種,日本に約 30種が知られる。 (→異翅類 , 半翅類 )

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百科事典マイペディア 「ヘリカメムシ」の意味・わかりやすい解説

ヘリカメムシ

半翅(はんし)目ヘリカメムシ科の昆虫。ヨーロッパ〜シベリアを経て中国,朝鮮,樺太に分布。日本では北海道と本州の寒冷地にいる。体長14mm内外,褐色。種々の植物の汁を吸う。ヘリカメムシ科は種類が多く,前翅の膜質部に多くの縦脈がある点で他のカメムシ類と異なる。みな植物の汁を吸うので,マメ類につくホソヘリカメムシなど農業や園芸上の害虫が多い。

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