ベッリーニ(Giovanni Bellini)(読み)べっりーに(英語表記)Giovanni Bellini

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ベッリーニ(Giovanni Bellini)
べっりーに
Giovanni Bellini
(1430ころ―1516)

イタリア、ベネチア派の画家。ヤコポ・ベッリーニの子。通称ジャンベッリーノGiambellino。ベネチアに生まれ、パドバの父の工房で兄ジェンティーレとともに修業。当初父ヤコポに近い作風を示すが、やがて義兄弟マンテーニャらパドバ派の写実主義に接近し、ベネチア絵画伝統の東方ビザンティン様式からの脱皮を図る。初期作品には『ゲッセマネの祈り』(1459ころ・ロンドン、ナショナル・ギャラリー)など、マンテーニャの影響が強いが、1460年代に入り、明るく豊かな色彩、光に満ちた空間表現による、柔らかい情趣のある独自の画風を確立。ピエロ・デッラ・フランチェスカの手法を受け継いだ清澄広闊(こうかつ)な空間表現、74~75年ベネチアに滞在したアントネッロ・ダ・メッシーナから学んだ油彩画法による色彩表現を駆使して、数多くの祭壇画・聖母子像を制作した。『聖母戴冠(たいかん)』(1471~74・ペザロ市立美術館)、サン・ジョベの祭壇画(1487ころ・ベネチア、アカデミア美術館)、サンタ・マリア・ディ・フラーリの祭壇画(1488)などは円熟期の代表作である。晩年には、風景描写に優れた寓意(ぐうい)画や世俗画のほか、メッシーナの手法に倣った肖像画においても力量を発揮し、『レオナルド・ロレダーノ総督』(1501ころ・ロンドン、ナショナル・ギャラリー)などの傑作を残している。83年以降ベネチア共和国の公用画家として長年ベネチア派の発展に尽くし、門下ジョルジョーネ、ティツィアーノらを育て、16世紀における同派の最盛期をもたらす基礎を築いた。1516年11月29日ベネチアに没。

三好 徹]


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