化学辞典 第2版 の解説
ホスファチジルエタノールアミン
ホスファチジルエタノールアミン
phosphatidyl ethanolamine
1,2-diacyl-sn-glycerol 3-phosphoethanolamine.ケファリンともいう.生物界のリン脂質のなかでは,レシチンについで多く存在する.グラム陰性細菌の主要リン脂質で,大腸菌では全リン脂質の65~85% を占める.生物体からの抽出精製法は多数知られているが,代表的なものはクロロホルム-無水エタノールによる抽出,分画法で,抽出物からはシリカゲルやDEAE-セルロースカラムクロマトグラフィーにより,容易に精製することができる.一般には,白色または微黄色の樹脂状あるいはろう状物質.構成脂肪酸は生物体の種類により異なり,微生物と卵黄のものは動物組織のものに比べて比較的飽和脂肪酸が多い.不飽和脂肪酸の多いものは,飽和脂肪酸の多いものに比べて酸化を受けやすく不安定である.弱酸性のリン脂質で,ほかのものに比べて親水性に乏しく,水に懸濁しにくい.エタノール,メタノール,エーテル,石油エーテル,クロロホルム,ベンゼンに可溶,アセトンに不溶.合成されたジステアロイル-L-α-グリセリルホスホリルエタノールアミンは白色の粉末.融点175 ℃.ホスホリパーゼAの作用により,脂肪酸が1個除去されたリゾホスファチジルエタノールアミンを生じる.生体内では,ホスファチジルセリンの脱炭酸またはジグリセリドとCDP-エタノールアミンとの反応により生合成される.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報