ボスポラス海峡横断鉄道トンネル(読み)ぼすぽらすかいきょうおうだんてつどうとんねる(その他表記)Bosphorus Strait Railway Tunnel

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ボスポラス海峡横断鉄道トンネル
ぼすぽらすかいきょうおうだんてつどうとんねる
Bosphorus Strait Railway Tunnel

トルコ北西部、黒海マルマラ海を結ぶボスポラス海峡を横断する海底鉄道トンネル海峡の西側に位置するシルケジ駅と東側のウシュキュダル駅の間の海底1387メートルを含む、全長1万3558メートルのトンネルである。2004年に着工し、2013年に完成した。海底トンネル計画そのものは1860年のオスマン帝国時代のものにまでさかのぼる。世界の海底トンネルのなかで特出した長さではないが、技術的にも、資金面でもむずかしかった工事を、日本の政府と企業の協力により、最初の計画からおよそ150年を経て実現した。これまでボスポラス海峡を渡る場合には、自動車で渋滞する橋を渡るか、フェリー海上を渡るしかなかったが、鉄道の開通により約4分で横断できるようになった。鉄道はトルコ共和国建国90周年にあたる2013年10月29日に開業した。

 このトンネルの計画は、トルコ語でマルマラ海と鉄道を意味することばからつくられた「マルマライ・プロジェクト」とよばれる。海底部分は掘削トンネルではなく、長さ135メートル、重さ1万8000トンの鉄筋コンクリート製沈埋函を11函つなぎあわせてトンネルとする最新の工法が採用された。海底60メートルの沈埋函トンネルは世界最深で、水圧地震に対する沈埋函の強度、波力や水圧の影響など、克服すべき課題は多く、工事は困難を極めた。また、両岸の駅付近の工事では、ローマ時代やビザンティン帝国時代の遺物が次々と出土し、その発掘と保存作業のため、工期は5年あまり延長された。なお、総事業費約3900億円のうち1500億円は、円借款でまかなわれた。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android