マテチャ(英語表記)maté
yerba maté
Ilex paraguayensis St.Hil.

改訂新版 世界大百科事典 「マテチャ」の意味・わかりやすい解説

マテチャ
maté
yerba maté
Ilex paraguayensis St.Hil.

ブラジル南部からアルゼンチンの北東部の山地原産のモチノキ科常緑樹。マテ,パラグアイチャノキともいう。葉を熱気で乾燥し,砕いて茶(マテ茶)とする。南アメリカで古くから飲用され,茶,コーヒー,ココアに次ぐ嗜好品(しこうひん)であるが,利用は自生地を中心とした南アメリカに限られている。樹高3~15mになる。葉は質厚く,長さ4~10cmの楕円形。花は小さな緑色で,葉腋(ようえき)に咲く。果実は直径5mmで赤褐色に熟す。パラナマツ(ナンヨウスギ科)の林の中に散在して生え,両者の分布はほぼ一致している。現地の農家が小枝ごと葉を採集して乾かし,製茶会社に売り渡す。野生品が利用されることが多いが,栽培も行われている。冷涼な気候を好み,気温の高い海岸地方には生えない。またブラジルでも北部には自生がなく,マテ茶を飲む習慣もない。容器に茶の葉をたっぷり入れ,湯を入れて専用のストローでかきまぜ,しばらくしてからストローで吸って飲む。お湯を注ぎ足しては次々と回し飲みされる。このような飲み方はシマロンと呼ばれる。砂糖やレモンなどを加えた飲み方もあり,また熱い茶のほか,冷たくしたものも好まれる。マテ茶にはカフェインが約1%(乾燥茶葉),ほかにタンニンビタミンなどが含有されていて,茶と同様な飲料効果がある。

 マテ茶は,アメリカ大陸原住のインディオ(とくにグアラニー族)が薬用に供していたもので,現在でもパンパ地方でガウチョが常用し,アルゼンチン,ウルグアイに広まった。パラグアイの主要輸出品の一つでもある。チリではブラジルからかなりの量を輸入して飲用している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マテチャ」の意味・わかりやすい解説

マテチャ
まてちゃ
[学] Ilex paraguariensis St.Hil.

モチノキ科(APG分類:モチノキ科)の常緑高木。高さ3~15メートル。葉は厚く、楕円(だえん)形で長さ約10センチメートル、縁(へり)に鋸歯(きょし)がある。花は葉腋(ようえき)につき、緑色。果実は径5ミリメートル、球形の液果で、赤褐色に熟す。葉を加工し、マテ茶maté, Paraguay teaをつくる。パラグアイ、ブラジルに自生する。低地で湿度の高い半日陰でよく育つが、高地でも生育できる。一般には野生のものの葉を利用するが、ブラジルではまれに栽培もある。栽培はまず種子を播(ま)いて苗をつくり、これをパラナマツの日陰に定植する。定植後4年目ころから葉を採取できる。葉は天日または火熱で乾燥し、細かく砕いて包葉する。

 マテ茶の飲用は南アメリカでは普及しているが、ヨーロッパやアジアではあまり行われない。

[星川清親 2021年11月17日]

文化史

マテとは本来、ペルーのケチュア語でヒョウタンをさす。これはヒョウタンの器に粉末にしたマテ茶を入れて飲むからで、現在もその方法が主流である。マテ茶の利用は古く、ペルーでは1000年以上前のマテ茶が死者の供物からみいだされている。ブラジルやパラグアイの先住民も白人到来前から嗜好(しこう)品としての飲用のほか、下痢止めや日射病の治療に飲み、粉末を切り傷や腫(は)れ物の薬に使い、歯をじょうぶにするために葉をかみ、樹皮から紫色の染料をとった。飲用するには器の7分目くらい粉末を入れ、そのつど湯か水を注ぎ、膨らんだ先に細かい穴が一面にあいた金属製ストローで飲む。

 葉の成分はタンニン8%、カフェイン2%で、ほかに少量のバニリン、コリン、クエン酸を含む。

[湯浅浩史 2021年11月17日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マテチャ」の意味・わかりやすい解説

マテチャ
Ilex paraguaiensis; Mate; Yerba Mate

モチノキ科の常緑低木で,南アメリカ原産。パラグアイチャの別名もあるように,パラグアイ,アルゼンチン,ブラジル西南部など南アメリカ大陸内陸部に産する。樹高3~4mでよく分枝し,長さ4~10cmの倒卵形の葉を互生する。葉は縁に低くあらい鋸歯があり,やや厚い革質,上面は暗緑色で下面は淡緑色である。若枝の葉腋に小さな白花を密につける。花は4弁で径4~6mm,平開する。果実は球形で径 5mmほど,熟すと赤褐色になる。葉にはカフェインとタンニンを含み,チャ (茶)の葉に似る。現地ではこの葉を乾燥して茶と同様の飲料とする。マテの名は現地名。

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