翻訳|marigold
キク科(APG分類:キク科)タゲテス属の英名で、本属植物の総称名としても用いられる。メキシコ原産の春播(ま)き一年草。園芸上多く栽培されるのは、アフリカンマリーゴールド、フレンチマリーゴールド、メキシカンマリーゴールド、および近年アメリカで改良されたアメリカンマリーゴールドである。アフリカンマリーゴールド(センジュギク)T. erecta L.は矮性(わいせい)種から高性種まで多くの品種があり、高さ30~80センチメートル。花は大輪系が多く、花径7~12センチメートル。キク咲き、カーネーション咲き、丁字(ちょうじ)咲きなどがある。花色は黄、橙(だいだい)、淡黄白色などで、近年白色花の品種も作出された。主として花壇用である。フレンチマリーゴールド(コウオウソウ)T. patula L.は矮性種で高さ20~30センチメートル。花は黄、橙、橙赤(とうせき)色、複色などで、径3~7センチメートルの小中輪花が多い。花形は一重咲き、キク咲き、カーネーション咲きなどがある。多花性で開花期も長いため、花壇、プランター・ポット用として、現在もっとも多く栽培される系統である。花の美しさをクジャクに見立て、和名をクジャクソウという。メキシカンマリーゴールドT. signata Bartl.は矮性の一重咲きで径2~3センチメートルの小輪花を非常に多く開き、じょうぶな品種である。アメリカンマリーゴールドは生育が旺盛(おうせい)で草姿のそろいもよく、優れた品種であるが、発芽率が悪いのが欠点である。ほかに三倍体種や一代交配種などの品種もある。
繁殖は実生(みしょう)により、4月下旬から5月上・中旬に、できるだけ薄播きにして軽く覆土する。本葉が4、5枚のころ、1平方メートル当り約15株を目安に定植するか、鉢植えでは3号鉢に1株の割合で植える。各種とも性質はじょうぶで、日当り、通風のよい場所では秋まで咲き続ける。
[金子勝巳 2022年4月19日]
マリーゴールドのマリーは聖母マリア、ゴールドは黄金色の花を意味するが、シェークスピアの『冬物語』に出てくるマリーゴールドをはじめ、中世以前のマリーゴールドは現在と違い、キンセンカなどであった。現在のマリーゴールドはメキシコのアステカ人が栽培化し、16世紀にスペインに導入されたものである。アフリカンマリーゴールドは、スペインが16世紀チュニスを占領したおり、北アフリカに持ち込まれたものの子孫である。フレンチマリーゴールドは染色体が48本の倍数体で、1572年ころフランスに導入された。日本には17世紀渡来し、『草花絵前集(くさばなえぜんしゅう)』(1699)に紅黄草(こうおうそう)の名で図示されている。細葉(ほそば)紅黄草(フレンチ・スポッテッド・マリーゴールド)はアフリカンマリーゴールドとフレンチマリーゴールドの交雑種である。マリーゴールドの白花の作出は1万ドルの賞金がかけられていたが、1975年アメリカで発表された。なお、黄色花はメキシコでは、卵の黄身の色付けに使われている。
[湯浅浩史 2022年4月19日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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