キンセンカ(読み)きんせんか

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キンセンカ」の意味・わかりやすい解説

キンセンカ
きんせんか / 金盞花
[学] Calendula officinalis L.

キク科(APG分類:キク科)の一年草で、原産地は南ヨーロッパ。トウキンセンカ(唐金盞花)とホンキンセンカC. arvensis L.の2種類があるが、一般にキンセンカといわれるのはトウキンセンカのことで、ホンキンセンカは中近東の原産で、小輪系の別種である。イギリスには1513年に初めて渡来し、そのころの栽培目的は観賞よりむしろ花の香りをスープやシチューの香味科に用いることにあった。現在は花壇、切り花、鉢植え用に栽培される。耐寒性があり、太平洋岸の暖地である房総、伊豆、渥美(あつみ)半島や淡路島などでは、7~8月に種を播(ま)き、12月から翌年4月にかけて露地で咲かせる切り花栽培が盛んである。茎は直立性であるが、下部からよく分枝する。花径が8~12センチメートルの頭状花を多数つけ、花色は濃橙(のうとう)色、鮮明な黄色のほかに淡黄色もある。茎がよく伸びる切り花向きの品種としては、ナカヤスキンセンカ、ムラジキンセンカ、オレンジスター、ヤシマシンクロなどの日本で改良されたものが多く用いられる。近年は花壇、鉢物向きとして草丈が15~20センチメートルのオレンジ・デライト、イエロー・デライト、ゴールデン・ゼム、オレンジ・ゼム、フエイスタギターナなどの輸入品種が多数栽培される。

 種子は8月下旬から9月下旬に、花壇に直接播く方法もあるが、普通は箱か苗床に播く。発芽して本葉が5、6枚のころに、株間15~20センチメートルに定植し、比較的寒い地方では霜よけして越冬させる。土壌酸度はpH6~7の中性でよく生育する。

[横山二郎 2022年2月18日]

文化史

ギリシア神話に登場する花であるが、中世のヨーロッパではハーブとしての用途がかなりあった。乾燥した花びらは樽(たる)詰めにして売られ、黄疸(おうだん)、胃病、虫下しなどの民間薬にされたほか、バターやチーズの色付け、調味料などにも使われた。中国には6世紀のなかばに伝わり、日本へは『和名抄(わみょうしょう)』に金銭花(こむせんか)の名が出ていることから、10世紀までには渡来したと推察される。室町時代の『仙伝抄(せんでんしょう)』や『池坊専応口伝(いけのぼうせんのうくでん)』には、いけ花の花材として名前が出ている。

[湯浅浩史 2022年2月18日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キンセンカ」の意味・わかりやすい解説

キンセンカ(金盞花)
キンセンカ
Calendula officinalis; pot marigold

キク科の一年草。南ヨーロッパ原産。葉は広楕円形または披針形で,直立した茎に互生する。茎はよく分枝し,頂部に橙黄色や鮮黄色の頭状花をつける。日本への渡来は嘉永年間 (1850年頃) とされ,大正時代から早春の切り花として利用されてきた。露地栽培が容易なため,花壇にも使われる。春の彼岸の供花としてよく用いられるため,仏花としての印象が強い。従来,頭状花の直径が 10cmに達する大輪の八重咲き品種が好まれてきたが,最近では,直径3~4cmの半八重咲き品種や一重咲きの小輪品種も切り花として流通。それらはカレンデュラの属名で呼ばれることが多い。日当りと水はけのよい環境を好む。9月下旬に種をまく。

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