ミスカワイフ(英語表記)Miskawayh

改訂新版 世界大百科事典 「ミスカワイフ」の意味・わかりやすい解説

ミスカワイフ
Miskawayh
生没年:?-1030

ブワイフ朝時代の史家,哲学者。イブン・ミスカワイフIbn Miskawayhとも呼ばれる。ブワイフ朝の君主ムイッズ・アッダウラの宰相ムハッラビーMuhallabīの下で書記を務め,アドゥド・アッダウラ時代まで宮廷にあって,同朝内部の人間関係,政治事情に通じていた。この見聞が彼の史書《諸民族の試みTajārib al-Umam》の,ブワイフ朝関係の部分に生かされている。宗教的な粉飾が少なく,人物描写が生彩に富んでいて,同書の史料価値をきわめて高いものにしている。哲学関係の著書には,《倫理の浄化Tahdhīb al-Akhlāq》,倫理に関する逸話集である《アラブ,ペルシア人の諸規範Ādāb al-`Arab wal-Fars》が知られている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のミスカワイフの言及

【歴史】より

…また,イスラム帝国の分裂とマムルークなどの軍人が軍事・行政・財政に関する全権限をカリフに代わって行使する武家政治を経験した11世紀に,多く廷臣または官僚の手になる同時代史年代記が出現した。その代表作がミスカワイフの《諸民族の経験》で,巻頭に世界史のレジュメを付し,神学的歴史観とは無縁で,支配者の興亡をさめた冷静な筆致で記述する。しかし支配者自身が執筆を命じた王朝史やみずからの伝記の類は内容が空疎で,ただ美文のためだけで有名なものが少なくない。…

※「ミスカワイフ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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