英国の社会学者マイケル・ヤングが、能力主義が徹底された近未来社会を描いたディストピア小説「メリトクラシーの法則」で提唱した言葉。メリット(能力)とクラシー(支配体制)を合わせた造語で「個人の能力に基づいて社会的な地位や権力が分配されるべきだ」という理念を指す。家柄や身分などによって地位が決まる属性主義と対置される。欧米では実績や成果に基づく業績主義の意味で使われることが多く、能力や努力を評価する能力主義とは区別されることもある。
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イギリスの社会学者マイケル・ヤング,M.(Michael Young, M.)が1958年に書いた小説『The Rise of the Meritocracy』における造語で,その後教育や社会の分野で広く使われるようになった。「知能(IQ)+努力」からなる個人のメリットが,社会的選抜・配分の支配的原理となることを指す。また,そうした原理が人々の意識の中に受け入れられるイデオロギーの意味で用いることもある。小説では,伝統的な世襲や情実による属性主義が徐々に駆逐され,科学的に測定された知能に応じて教育と社会的地位が与えられる社会ができ上がるが,その厳密さが増すほど高知能エリートの世襲になるという逆説が起こり,全国的な危機を迎える結末になっている。業績主義,能力主義などの類似語があるが,それを合理的・効率的に突き詰めた結果が必ずしも幸福な社会を実現するとは限らないことを,この概念は暗示している。わが国ではとくに学歴社会との関わりの中で,日本型メリトクラシーの諸問題が検討されている。
著者: 大前敦巳
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報
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