メーフラワーコンパクト(その他表記)Mayflower Compact

改訂新版 世界大百科事典 「メーフラワーコンパクト」の意味・わかりやすい解説

メーフラワー・コンパクト
Mayflower Compact

メーフラワー誓約書ともいう。ピルグリム・ファーザーズ(巡礼父祖)によって,プリマス植民地建設にあたり,その乗船メーフラワー号上で結ばれた市民的政治団体civil body politic形成の契約書である。イギリスのピューリタンの中で,国教会から分離して独立の教会を形成することを主張していた分離派の一部は,信教の自由を求めて1608年オランダへ脱出した。さらに,彼ら自身の社会を形成するためロンドンの投資家たちの資金援助を受けて,結局102名の者が20年9月,イギリス経由でアメリカへと出航した。暴風など辛苦をなめて2ヵ月の航海の後,11月ニューイングランドのコッド岬沖に到着,適当な上陸地点を求めた。この102名の中には,ロンドンで働き手として雇われた40名ほどの者がいたが,彼らはピューリタンではなく,上陸を前に別行動をとることを考え,不穏な行動を示すにいたる。そこで,ピューリタンの指導者たちは,ともに協力して政治団体をつくり,その取決めにすべて服従することを神と相互の前に約束する契約書を作成,それに成年男子41名(その半数以上はピューリタンではない)が署名した。20年11月21日(当時の暦では11日)のことである。この契約書は,ユダヤ教キリスト教,とくにピューリタニズムの契約思想の伝統に基づくものであるとともに,新天地荒野に見知らぬ者たちが人為的に新社会を形成するにあたって,相互に文書で契約を結び,参加と服従とに同意しておくという現実的必要性があったことを示す。メーフラワー誓約書は,その後ニューイングランドのタウンや植民地形成の契約の原型となるが,その社会契約思想は,独立や憲法制定に際して一つの思想的背景をなしている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のメーフラワーコンパクトの言及

【契約】より

…それはホッブズやロックの契約思想の背景ともなっている。ピューリタン的社会契約思想は〈メーフラワー・コンパクト〉によるアメリカ建国にその現実的表現を見た。アメリカ合衆国の国家統合の基本理念はフェデラル・ユニオンであり,そのフェデラルfederalはラテン語のフォエドゥスfoedusつまり契約からくるものである。…

※「メーフラワーコンパクト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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