結び(読み)ムスビ

デジタル大辞泉 「結び」の意味・読み・例文・類語

むすび【結び】

ひも状のものを結ぶこと。また、結んだ部分。「結びがゆるい」「男結び
人と人とを関係づけること。縁を結ぶこと。「結びの神」「縁結び
文章や相撲の取り組みなどの、終わり。結末。「結びの言葉」「結び大一番
握り飯おむすび
係り結びで、係助詞に応じて語尾を変化させた文末の活用語。→係り結び
和集合わしゅうごう
[類語]末文文末巻末終わり最後おしまい終了終結終焉しゅうえん終末果てし幕切れ閉幕打ち止めちょんかんりょうジエンドしま最終結末締めくく結尾末尾掉尾とうび・ちょうび終局終幕大詰め土壇場どたんばどん詰まりすえラストエンディングフィニッシュフィナーレ

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精選版 日本国語大辞典 「結び」の意味・読み・例文・類語

むすび【結・掬】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「むすぶ(結)」の連用形の名詞化 )
  2. 紐状のものをからみ合わせ、巻き込んでつなぐこと。また、そのような状態にしたもの。
    1. [初出の実例]「紫の帯の結(むすび)も解きも見ずもとなや妹に恋ひ渡りなむ」(出典:万葉集(8C後)一二・二九七四)
  3. ( 掬 ) 両手で水をすくうこと。
    1. [初出の実例]「岩漏る清水いくむすびしつなどよみ給へるぞかし」(出典:今鏡(1170)六)
  4. 飯を両手で握り固めたもの。にぎりめし。
    1. [初出の実例]「縛られて手もかなはぬ、ついむすびをしてくれ」(出典:浄瑠璃・国性爺合戦(1715)三)
  5. 焼き飯をいう、女房詞。〔女中詞(元祿五年)(1692)〕
  6. 人と人とを関係づけて、親しくさせること。縁を結ぶこと。
    1. [初出の実例]「大臣幸のむすびあり。目無どちをはじめて、取あたりたるよね様を」(出典:浮世草子・好色二代男(1684)四)
  7. 口の閉じた様子。
    1. [初出の実例]「眼尻に優しい情が罩(こも)って、口の結びは少しく顔の締りを弛めて居るけれど」(出典:菊池君(1908)〈石川啄木〉二)
  8. 弁才船など大型荷船の外艫(そとども)最後部にある左右の知利(ちり)の上部を結合する材で、艫やぐらの高欄の台輪を兼ねるもの。〔和漢船用集(1766)〕
  9. 文章、物語などの終わり。結末。
    1. [初出の実例]「全篇の結びを付ける積りである」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉八)
  10. 文法で、係り結びの係助詞と呼応して、文を終わらせる語形をいう。→係り結び
  11. 数学で、幾つかの集合のいずれかに含まれている元の全体からなる集合の、その幾つかの集合に対する称。カップ。ジョイン。和集合。

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改訂新版 世界大百科事典 「結び」の意味・わかりやすい解説

結び (むすび)

紐状の材料を使い,その先端をさまざまな方向にくぐらせて引き締める技法。人間はこの技法を習得して初めて,物を束ねたり,結び合わせたりすることができるようになった。これは人間が習得した最初の,そして他の動物を文化的に引き離す基礎となった技術の一つといえよう。たとえば,石と木とをかずらやつるでしばりつける方法を考えついたことによって,石の穂先とその力を効果的にする柄(え)とを組み合わせて石槍,銛(もり),弓矢などの道具をつくり出した。また,結び目の四方への広がりによって網を発明したが,これによって狩猟,漁労を能率的にし,生活面に大きな変革をもたらした。また,古代の人々は結びを祈占,呪術の具にも使ったと推測される。そのことは縄文時代の石棒の頸部に結縛を施してあるものや,縄文中期の土偶に施してある結びからうかがえる。

結びの展開を遺物によって跡づけることはむずかしい。結びに使われた紐は,腐敗して残っていないからである。そこでどうしても土器面につけられている文様や,土器,石器,貝殻などに設けられている穴を対象にして結びの姿を復元しなくてはならない。縄文土器面にみられる文様には〈ひとえ結び〉〈ま結び〉〈片結び〉などがみられる。しかし近年,福井県鳥浜貝塚から縄文前期の縒(よ)り合わせた縄,三つ組みの縄,ひとえ結びの縄などが出土したが,これは日本最古の実物である。また古墳時代の埴輪(はにわ)には,装身具,武具,馬具に結びの形を表現したものが認められるが,結びの種類としては〈ま結び〉〈もろわな結び(蝶結び)〉など単純な結びに限られている。

 日本における,結びに伴う観念には,吉と凶,陰と陽,長寿(魂(たま)結び)と豊年(生(いく)結び)などがあり,世界に例のない高度な展開をみせている。結びが呪術として用いられた全盛期は律令時代といえよう。当時の人々は生活の多方面にわたってまず神意をうかがい,吉凶を判断してから,行動を開始した。たとえば川に流した縄の状態で占う〈水占い〉,草を結んで占う〈草占い〉などがある。その他結びの神秘的な能力を信じて,自分の長寿を願う呪術もあった。これにはよく松の葉が使われたが,常緑の松の長い生命力にあやかろうとしたのである。また,魂が身体から抜け出すのを防ぎ,あるいは一見遊離した魂を元にもどすための〈むすびの呪術〉がある。さらに,歴代天皇の魂を鎮めるための鎮魂祭の中には〈御魂(みたま)結び〉という呪法がみられる。また,心身の潔白を保つために禊(みそぎ)または祓(はらい)行事を行ったが,そのうちの一つに〈解縄(ときなわ)祓〉があり,これに用いる用具は串,人形(ひとがた),米と解縄である。解縄を口にくわえて手で縒りを戻すのであるが,これは汚れを解く模擬的な行為である。平安中期に活躍した祈禱師安倍晴明は,後世,陰陽道の祖と仰がれた天文・陰陽道の大家であるが,彼が創作したといわれる〈安倍晴明判紋〉という星印はまぎれもなく結びの呪術である。明治時代には陸軍の式帽の上部に縫いとられ,星章として使われた。

文字のまだない時代には,木に刻んだ印と縄の結びが情報の伝達や記録に大きな役割を果たした。中国には〈結縄の政〉という言葉があり,周易の《繫辞》下伝には〈上古結縄而治,後世聖人易之以書契〉とあって,中国においても文字以前に〈結び〉による伝達方法のあったことを伝えている。一方,沖縄では第2次世界大戦中まで藁(わら)を用いた〈藁算〉が文字を知らない民衆の間で,数量の記録,計算,納税事務などの算法として使われていた。藁算の場合,桁は枝の分岐によって区別し,輪結びは5を表した。また家の道順,道筋を藁束の枝分れを利用して示した〈サン〉という結縄法がある。沖縄の藁算以上に高度と思われるものに古代ペルー(インカ)の結縄がある。これはキープquipueと呼ばれ,紐上の結びの位置による桁の表示,さらに紐の色分けによって物品の内容を表現した。このキープをつかって人口調査や統計,穀物倉庫の貯蔵量,軍隊の数,採金の量などあらゆるものを記録し,統計をとって保存していたが,それを読む〈キープ・カマヨ〉と呼ばれる専門家もいた。結びは計測上でも各方面に利用され,たとえば船舶の速度を表す単位を〈ノットknot〉というが,船から紐を流し一定の時間に繰り出された紐の結び目を数えて船の速さを計測したところから名づけられた。また火縄時計は焼失した縄の結び目の数から測定された。

日本の結びには結合という目的のほかに,その様式の美しさそのものが目的とされる場合がある。この結びの装飾性から注目されるものに〈花結び〉がある。これは1本の紐でいろいろな造形を行うもので,本来はそこに草花のもつ強い生命力を封じ込め,呪術的に身につけたり,また場合によっては衣服に縫いつけたりした。平安中期以降,花結びは上流の女性のたしなみの一つとして,和歌や習字などとならんで必須のものとされた。足利義政の時代に香道の志野宗信によって花結びの手法が新しく考案され,それまでは婦女子だけのものであったものが,茶人および香人も必ず知らねばならぬものとなった。基本的なものとして〈あげまき結び〉〈あわび結び〉〈けまん結び〉など数十種をあげることができる。装飾を目的とした結びは服飾,家具調度,結髪,帯結びなどに利用されたが,これらは王朝文化,武家文化,町人文化など社会の変遷に従って盛衰してきた。日本の装飾結びはその華麗さからも,その多様性からも,世界に類を見ないものである。

 人類の長い歴史を通じ,社会の変遷に関係なく伝承されてきたのが〈作業結び〉である。作業結びのうちで基本となっているものは大体十種類ぐらいであるが,これらは人間が生きるために必要な基本的な結び方であったと考えられる。たとえば紐の材料として獣魚皮を多く用いるエスキモーの社会においても,植物性繊維を多く用いる南方民族においても,ほぼ同じ種類の作業結びを開発し,利用しているからである。日本で最も多く使用している結びは〈ま結び〉と〈男結び〉である。一般の人はま結びを多く用い,作業者は男結びを多く用いる。男結びの特徴は縄の一端から使い始めて,結び終わった後に切ればよいので,きわめて経済的である。しかも結んだ後ではなかなか解けにくい堅固な結びである。職業と結びついた特殊な結びもある。たとえば〈はた結び〉〈かこ結び〉は農・林・漁業に,〈もやい結び〉〈てぐす結び〉は漁業に,〈よりこみ結び〉〈すごき結び〉は農・林・植木職に固有の結びである。また日本では解けやすいので嫌われている〈たて結び〉が台湾や朝鮮半島では好んで多用されているし,日本で代表的な作業結びである〈男結び〉がヨーロッパでは見かけないなど地域や民族による特徴をも認めることができる。これらの結びのもつ特徴は,絞殺などの犯罪の際には,犯人割出しの参考とされる。

結びは〈目〉と〈体〉と〈手〉の三つの部分から構成されている(図1)。〈目〉とは一般に〈結び目〉と呼ばれているところで,各種の花結びはこの〈目〉の部分を美しく装飾化したものである。この〈目〉の左右への,あるいは四方への連係によって〈マクラメ編み〉などの編物はつくられている。〈体〉というのは〈わさ〉になっている部分のことで,紐を幾重にも重ねて巻くことによって結びを強固にすることができ,この技法は荷物,小包,俵などをしばるときに利用される。また日本刀の柄ややかんの柄のように〈体〉をくり返して巻き込めば装飾となる。〈手〉というのは結んだひもの端のことで,相撲の横綱とか各種の水引の飾結びなどは〈手〉の部分が装飾化されたものである。女帯の結び上げも〈手〉の装飾化と考えられる。このように〈目〉〈体〉〈手〉の3部分がそれぞれの目的に応じて発達し,また場合によっては相互に調和して結びの文化はつくり上げられている。

結びをその使用目的から分類してみると,結節,結合,結着,結縮,文様,結束の六つに分けられる(図2)。結節とは,紐の一端に結び目(こぶ)をつくるもの。これは紐のすべり止めや,縄や綱の縒りの解けるのを防ぐためのものである。これには〈ひとえ結び〉や〈8の字結び〉が用いられる。結合とは,紐と紐とをつなぎ合わせるもので,結びの利用として最も多い。〈ま結び〉〈てぐす結び〉〈はた結び〉〈男結び〉〈蝶結び〉などは代表的な結合結びである。結着とは,紐を他の物に結びつけるものである。たとえば棒に紐をしばりつけたり,物を吊り下げるときに用いる。これには〈すごき結び〉〈かこ結び〉〈もやい結び〉〈ふた結び〉などがある。結縮とは,紐の中ほどでその長さを短縮させるもの。たとえば一度結束した紐のゆるみを引き締めたり,紐の弱いところを補強したりするのに用いる。これには〈シープ・シャンクsheep shank〉や〈くさり結び〉などがある。文様とは,結び目の装飾化であり,日本に古来から伝わる花結びがこの大部分を占めている。〈松結び〉〈竹結び〉〈梅結び〉〈菊結び〉〈蝶結び〉〈あわび結び〉など自然の風物にちなんで名づけたものが多い。結束とは他の物をしばる方法であり,いわゆる〈体〉の部分が発達したものである。たとえば箱,俵,桶,木材などに縄を幾重にも巻いて荷造りをするのに用いる。桶のように円筒形のもの,壺のように丸いもの,鏡のようにこわれやすいものの結束には独自の技法がみられる。
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三次元空間内にあって,円周と同相(すなわち,連続的に1対1対応)である図形(図3a)を結び目という。二つの結び目があるとき,自分自身とは交わらずに連続的に一方から他方に移りうるとき,これら二つの結び目は同位であるという。与えられた二つの結び目が同位であるか否かを判定することが結び目理論の基本問題であるが,一般的取扱いはきわめて困難である。三次元空間から与えられた結び目を除いた部分の基本群は結び目群とよばれる。結び目群は結び目研究の主なる方法であり,結び目群が整数全体からなる加法群に同形になるとき,その結び目は円周に同位になることが知られている。しかし結び目群が同形でも同位にならない結び目が存在することも知られており,結び目群の研究のみで結び目問題は解決されない。また結び目で分岐する被覆空間を通じて研究する方法も知られている。

 高次元空間においても結び目は考えられ,n次元ユークリッド空間内にあって,m次元球面と同相な図形はn次元空間内のm-結び目とよばれる。通常の結び目は三次元空間の1-結び目である。高次元の結び目においては,次元差nmが3以上の場合すべて互いに同位であることが知られており,意味のある結び目はn次元空間内の(n-2)-結び目にかぎる。このほか野性的結び目(図3b)とよばれるものもある。
位相幾何学
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百科事典マイペディア 「結び」の意味・わかりやすい解説

結び【むすび】

縄,紐(ひも)等をつないだり締めたりすること,またその結び目。こぶを作って結ぶひとえ結び,8字結び等の〈結節〉,両端を結び合わせるま結び,男結び,はた結び,てぐす結び等の〈結合〉,杭(くい)にくくりつけたりする場合のもやい結び等の〈結着〉,紐の中ほどで長さを縮める〈結縮〉,装飾用の〈文様〉等に大別される。文様は甲冑(かっちゅう)の背部等に用いられる総角(あげまき)結び,仏具の飾り等に用いられる華鬘(けまん)結び等,日本古来の花結びが大部分をしめる。→結縄

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