日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨウ化銀」の意味・わかりやすい解説
ヨウ化銀
ようかぎん
silver iodide
銀とヨウ素の化合物。暗所で硝酸銀水溶液にヨウ化カリウム水溶液を加えると沈殿する黄色結晶。感光性があり、紫外部から約480ナノメートルまでの波長の光に感じ、徐々に灰黒色となる。ハロゲン化銀のなかではもっとも難溶。濃アンモニア水にもほとんど溶けないが、シアン化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、熱濃ヨウ化カリウム水溶液、濃硝酸に溶ける。結晶には三つの変態があり、常温から137℃まではγ(ガンマ)態、137~146℃でβ(ベータ)態、146℃~融点までα(アルファ)態が安定である。しかしこれらの転移速度は小さく、沈殿法で得られるものはこれらの混合物である。γ態は立方晶系、閃(せん)亜鉛鉱型構造。結合間隔Ag-I 2.80Å(オングストローム)。β態は六方晶系、ウルツ鉱型構造、結合間隔Ag-I 2.78Å。α態は立方晶系、乱れた構造で、結合間隔Ag-I 2.52~2.86Å。このα態は異常に大きな電導性がある。約1Ω-1・cm-1。臭化銀と混合して写真乳剤に用いられる。
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