わずか0・15グラムでヒトを死にいたらせる。口から体に入ると、目まいや
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カリウムのシアン化物。俗に青酸カリ、青化カリなどとよばれる。1782年スウェーデンの化学者シェーレによって初めて合成された。今日ではメタン‐アンモニア酸化法により、あるいはアクリロニトリル製造時の副生物としてシアン化水素酸(青酸)が多量に、しかも安価につくられるようになったので、これを用いて合成される。すなわち、水酸化カリウム水溶液をシアン化水素酸で中和し、濃縮して結晶化してから乾燥する。
KOH+HCN―→KCN+H2O
無色結晶性固体。潮解性で水にきわめてよく溶け、アルコールにも溶ける。水溶液中では加水分解して強アルカリ性を示す。酸と反応してシアン化水素を発生する。空気中に放置すれば水分と二酸化炭素を吸収し、シアン化水素を放って炭酸カリウムとなる。また、高温や光の照射、酸化剤の存在のもとで速やかに酸化されるので、保存には冷暗所を選び、密栓しておくことが必要である。
生体内でも分解してシアン化水素を生成するので、きわめて有毒であり、致死量は人間に対し0.15グラムである。濃水溶液も皮膚を冒すので取扱いには注意を要する。皮膚に付着したら、ただちに温せっけん水で十分に洗わなければならない。
空気の存在下で銀、金など多くの遷移金属を溶解し、たとえば次のような反応によってシアノ錯塩をつくる。
4Au+8CN-+O2+2H2O
―→4[Au(CN)2]-+4OH-
この反応は金、銀、銅、鉛などの電気めっき、金の精錬に利用される。そのほか、シアン化ナトリウムと混合して窒化鋼の製造、分析試薬などに用いられる。
[鳥居泰男]
化学式KCN。俗に青酸カリと呼ばれる。無色立方晶系の潮解性粉末または塊。岩塩型構造。-60℃で低温型斜方晶系に転移する。融点634.5℃。比重1.52(16℃)。屈折率1.410。猛毒である。水100gへの溶解度41.7g(25℃),122.2g(103.3℃)。メチルアルコール100gに19.5℃で0.9g溶ける。グリセリン,液体アンモニアに微溶。水溶液中で加水分解し,アルカリ性を示す。水溶液は,室温で徐々に,高温または光照射,酸化剤共存で速やかに酸化される。固体を空気中で熱すると分解して炭酸カリウムを生ずる。赤熱状態で二酸化炭素と反応して一酸化炭素とシアン酸カリウムKOCNを生じ,マグネシウム,アルミニウムと反応して,これらの金属の窒化物をつくる。水溶液は空気の共存で多くの金属を溶解し,それらのシアノ錯塩を作る。
工業的には,炭酸カリウムと炭素の混合物をアンモニア気流中で加熱して作る。
K2CO3+4C+2NH3─→2KCN+3CO+3H2
冶金,めっき,写真,シアノ錯塩製造,有機合成試薬,分析試薬など多くの用途がある。工業的目的にはシアン化ナトリウムNaCNを用いることが多い。
シアン化カリウムは空気中の二酸化炭素と水分の作用で徐々に潮解性の炭酸カリウムに変化し,猛毒,揮発性のシアン化水素HCN(沸点25.7℃)を発生してきわめて危険であるため,厳重に密栓保存する。瓶のふたを開けてにおいをかぐようなことをしてはいけない。致死量0.15g。保管にはとくに厳重な注意が必要である。
執筆者:藤本 昌利
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
KCN(65.12).青酸カリ,青化カリともいう.以前は炭酸カリウムと炭素の混合物をアンモニア中で加熱してつくることが多かったが,現在では,シアン化水素が多量に生産されるようになり,これと水酸化カリウムとの反応でつくる.無色,潮解性の固体.室温で安定な形は塩化ナトリウム型構造の立方晶系の結晶.C-N約1.16 Å.このほかに,低温で安定な数種類の変態がある.融点634.5 ℃.密度1.52 g cm-3.水に易溶.水溶液は強アルカリ性を示す.固体を空気中に放置すると湿気とCO2で分解し,HCNを発生してK2CO3になる.酸を加えるとHCNを発生する.金属塩と反応してシアノ錯体をつくりやすい.分析試薬に用いられるほか,金属めっき液,鉄鋼の焼入れ,金属抽出,写真などで用いられるが,NaCNで代替されることも多い.猛毒.ヒトの致死量は約0.15 g,LD50 10 mg/kg(ラット,経口).[CAS 151-50-8]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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