改訂新版 世界大百科事典 「ヨーロッパクサリヘビ」の意味・わかりやすい解説
ヨーロッパクサリヘビ
European viper
European adder
Vipera berus
クサリヘビ科クサリヘビ亜科の代表的な毒ヘビ。ヨーロッパ北・中部からシベリアを経てサハリンまで広く分布し,スカンジナビア半島では北極圏付近まで達している。全長50~60cm,最大90cmほどの小型で,雌は雄よりも大きくなる。頭部は長三角形でそれほど大きくなく,瞳孔は縦長で眼前にはピット器官を欠く。体背面は灰色から灰褐色で正中線上を黒色のジグザグ模様が走るが,イベリア半島北部産のものでは褐色の太い線模様となる。平地から3000mの高地に至る開けた森林から耕地まで広く分布し,おもに夜間に活動するが昼間でも行動する。餌は小哺乳類,トカゲなど。卵胎生で夏に5~20匹の子を生む。行動はにぶいが攻撃はすばやく,毒の主成分は強い神経毒。しかし,近縁種でほぼ同大の,アルプス地方産のアスプクサリヘビV.aspisやイベリア半島産のラタストクサリヘビV.latastiほど危険ではない。
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報