日本大百科全書(ニッポニカ) 「クサリヘビ」の意味・わかりやすい解説
クサリヘビ
くさりへび / 鎖蛇
viper
adder
爬虫(はちゅう)綱有鱗(ゆうりん)目クサリヘビ科クサリヘビ亜科に属するヘビの総称。この亜科Viperinaeの毒ヘビは、クサリヘビ科のうちピット器官pit(頬窩(きょうか))を欠く仲間である。ヨーロッパ、アフリカ、アジアに9属45種が分布し、ヨーロッパクサリヘビVipera berusがスカンジナビア半島の北極圏付近からシベリアまで分布するが、大半は熱帯地方に生息する。頭部は三角形で胴が太く尾は短い。ラッセルクサリヘビV. russelliのように体背面に鎖状の斑紋(はんもん)が並ぶのが和名の由来である。卵胎生で一度に20~60匹の子ヘビを産む。全長60~100センチメートルのものが多いが、大形種は1.5メートルに達する。アフリカ産のガブーンバイパーBitis gabonicaやライノセラスバイパーB. nasicornisは5センチメートルもの長い毒牙(どくが)をもち、美しい色彩斑紋はブッシュ(茂み)の中では効果的なカムフラージュとなっている。クサリヘビは主成分の出血毒に加えて多量の神経毒をも含むため、すべてが危険種で、とくにパキスタンからアジア南部に広く分布するラッセルクサリヘビは生息密度が高く、居住区付近にも多いため咬症(こうしょう)の被害が多い。興奮すると胴を膨らませ、シューッと激しく音をたてて飛びかかる。中近東からインドに分布するトゲクサリヘビEchis carinatusは、50センチメートルほどの小形ながら、危険性はキングコブラ並みとされている。
[松井孝爾]