ラスカーズ(その他表記)Emmanuel Augustin Dieudonné,comte de Las Cases

改訂新版 世界大百科事典 「ラスカーズ」の意味・わかりやすい解説

ラス・カーズ
Emmanuel Augustin Dieudonné,comte de Las Cases
生没年:1766-1842

フランスの著作家。南フランスのルベル市の小貴族の出身で,海軍将校となったが,1791年フランス革命を避けて亡命,92年にはコンデ公のもとでキブロン上陸作戦に参加し,イギリスに逃れた。1802年帰国して参事院請願委員をへてナポレオン皇帝侍従となり,男爵となった。15年ナポレオンが没落すると,その子を伴いセントヘレナ島に随行し,秘書としてナポレオンの口述を筆記した。16年12月セント・ヘレナ島総督ハドソン・ローに陰謀嫌疑を受けて追放され,ブリュッセルに居住し,21年ナポレオンが死ぬとフランスに帰った。セント・ヘレナ島に行く艦上で開始し,島でも続けた皇帝の口述,自分の日記を整理して18年には自分の《回想録》を出し,ついで22年の序文を付した《セント・ヘレナの回想Mémorial de Sainte-Hélène》8巻(1823)を出版した。この著はナポレオン伝説の〈福音書〉とまで言われ,〈セント・ヘレナ文学〉の傑作で,ナポレオンの帝政と革命の同一化,革命から帝政への推移の正当性,自由主義という意図をよく伝えており,ナポレオンの独裁者から救世主への変貌という政治的目的を達成した。その結果国内ボナパルト派は自由主義者,共和派までを列中に加えた。ヨーロッパではドイツ,イギリスのほか5ヵ国語に翻訳され,ナポレオン伝説を輸出することとなり,ラス・カーズは印税300万フラン以上を得た。31年には議員となった。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラスカーズ」の意味・わかりやすい解説

ラス・カーズ
Las Cases, Emmanuel (-Augustin-Dieudonné-Joseph), Comte de

[生]1766.6.21. オートガロンヌ,ルベル近郊
[没]1842.5.15. パッシー
フランスの歴史家。海軍軍人であったが,1791年フランス革命により亡命しブリュメール十八日以後,帰国。ナポレオン1世の信任を得,ワーテルローの会戦後セントヘレナ島で 18ヵ月間ナポレオンに仕え,その言行を記録したが追放処分を受けた。喜望峰,ドイツ,ベルギーに抑留されたが,ナポレオンの死後,1822年フランスに帰国。七月革命後代議士となり極左派に席をおいた。著書『セントヘレナの回想』 Mémorial de Sainte-Hélène (1823~24) 。

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