翻訳|lavender
ヨーロッパの香料作物として有名なシソ科の半木本性植物。精油を採取するため栽培される植物の基本になったものはトゥルーラベンダーLavandura angustifolia Mill.(=L.spica L.)(英名true lavender,common lavender)であるが,栽培される系統の多くはヒロハラベンダーL.latifolia Med.(英名spike lavender)が多少とも交雑した雑種であると考えられている。
トゥルーラベンダーは地中海からアルプス地方に原産する多年草で,草丈は約1mになり,夏にライラック色の花を長い花梗に6~10花ずつ輪状につけ,全体として穂のようになる。ヒロハラベンダーは,より木質化した茎を有し,葉は幅が広く,開花時には花茎は多少とも分枝することで区別され,西部地中海地域に分布する。寒さにもやや弱い。ラベンダーは日本では文化年間(1804-18)に記載があり,当時すでにヨーロッパから渡来していたと考えられる。主産地はフランス,イタリア,スペインで,日本では現在は北海道と長野県で栽培されている。花が8分咲きのときが最も精油収量が高く,北海道の例では,7月に花穂の下1葉から鎌で刈り取って収穫する。生の花穂を水蒸気蒸留すると0.5~0.8%の黄色の精油(ラベンダー油)が得られ,セッケン,化粧品などの香料とされる。昔は薬用にも使われた。欧米では観賞用にも栽培され,園芸品種もいくつか知られている。繁殖は5月に挿木し,秋または翌年4~5月に定植する。
執筆者:星川 清親
ラベンダーの名は,一説には古代ローマ人が浴槽に入れて芳香を楽しんだことから,ラテン語のlavare(〈洗う〉の意)に由来するといわれる。その芳香油(ラベンダー油)は古くから需要の高い商品であり,干した花でポプリも盛んに作られた。これをたんす(簞笥)に入れれば虫よけになるといい,ここから英語の〈たいせつに保管するto lay(up)in lavender〉との成句も生じた。この花に毒蛇がすむとして花輪に加えることを嫌うのは,ローマ時代からの習慣といわれている。花言葉は〈清潔,新鮮〉〈貞節〉など。
執筆者:荒俣 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
シソ科(APG分類:シソ科)の小低木。地中海沿岸地域の原産で、香料作物として栽培され、南フランスが主産地として名高い。高さ約60センチメートル、茎に白い軟毛が密生するため灰白色にみえる。葉は細く長さ約5センチメートル、幼茎では輪生、成長につれて対生となる。初夏に長さ30センチメートルの花茎を多数直立し、美しい紫色の唇形花を10個ほど輪生する。花は径約1センチメートル。植物体全体に芳香があり、花が開くころに刈り取り、蒸留法によって香油をとる。これをラベンダー油とよび、主成分は酢酸リナリルである。花だけからとるものがもっとも品質が優れる。ローマ時代には入浴用の香水として用いられたので、ラテン語の「洗う」という意味のlavareがラベンダーの名のもとになった。現在も多く栽培され、化粧品の香料、香水に用いられる。薬用には神経痛などに用いられ、また軟膏(なんこう)や塗布剤の香料にも使われる。日本へは江戸時代、文化(ぶんか)年間(1804~1818)に渡来し、現在は北海道でおもに栽培されている。日当りのよい湿気のある土地でよく育つ。
[星川清親 2021年9月17日]
古代のギリシアで栽培され、花冠や花輪に使われていた。テオフラストスは、種子から育てると述べている(『植物誌』)。ディオスコリデスはフレンチ・ラベンダーL. stoechos L.の産地としてストエカデス諸島をあげ、痛み止めや解毒剤に混ぜると記述している(『薬物誌』De materia medica)。カンフェンを含み、ヨーロッパではけいれんや喘息(ぜんそく)の民間薬にされた。香水や花を磁器の色づけにも使った。花はポプリの代表的な材料である。
[湯浅浩史 2021年9月17日]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新