日本大百科全書(ニッポニカ) 「ディオスコリデス」の意味・わかりやすい解説
ディオスコリデス
でぃおすこりです
Pedanios Dioskorides
(40ころ―90ころ)
ローマ時代のギリシア系の植物学者、薬学者。小アジアのアナザルボス(現、トルコのアダナ付近)の出身で、1世紀後半に活躍した。ローマ皇帝ネロ(在位54~68)の軍隊で軍医として勤務、医学的には四体液説(病気の原因は四つの体液のアンバランスにあるとした説)をとった。著書に百科事典的な『薬物誌』Peri hylēs iatrikēs/De materia medica5巻がある。そこには約600種の薬草があげられ、それらの名称と薬効が記されている。そしてプラトンからネロ帝までの時代の薬草の知識を、迷信を排しながら注意深く選択、整理し、それ以前の古い薬学書を科学的に批判している。この著書は、ルネサンス以後までも影響を及ぼした。
[平田 寛]
『鷲谷いづみ訳『ディオスコリデスの薬物誌』(1983・エンタプライズ)』