花びら、ハーブ(香草)、スパイス、保留剤(香りを落ち着かせ、長く薫らせるためのもの)などを混ぜ合わせ、熟成させたもの。フランス語では「ごたまぜ煮」「混成曲」の意味もある。たとえばバラの花びらやラベンダー、カモミール(カミツレ)やマージョラム(マヨラナ)、スパイスのクローブ(チョウジ)やカルダモンなどに、樹脂の安息香やイリス(アイリス)の根などを保留剤として加え、ときには果物の皮なども加え、よく混ぜ合わせたあと2週間ほどねかせてできた香りを室内香として用いる。
ポプリは乾燥させてつくるドライポプリと、生の花を粗塩に漬けてつくるモイストポプリの二通りの作り方がある。フランス人が「朽ちた壺(つぼ)」ともよぶ沈香壺(じんこうつぼ)(香料を入れてしばらく置き、芳香が満ちたころに蓋(ふた)をとり室内に香気を放つために使われた壺)のなかで花弁が発酵し、やがて朽ち、最後にはいい香りで残るモイストポプリが最古の方法であり、16世紀のイギリスで生まれたといわれている。生のままでは1週間ともたない香りも、ポプリにするとドライポプリで1~2年、モイストポプリで10年、50年と薫り続ける。17~18世紀にはフランスやイギリスで大流行し、沈香壺に入れたポプリの芳しき香りが楽しまれた。さらにリネン製品などへの移り香を楽しむため、あるいは防虫・殺菌効果を期待して、ハーブを詰めたサシェ(匂(にお)い袋)もドライポプリを利用してつくられた。日本でも金襴(きんらん)、錦(にしき)などの高級織物でつくった袋に丁子(ちょうじ)、じゃ香、白檀(びゃくだん)などを入れた匂い袋が古くから用いられている。
ポプリ作りは匙(さじ)加減ひとつで決まる香りの足し算といえる。花びら、ハーブ、スパイスのあわせ方によって、あるいは微妙な分量の差によってできあがる香りはかなり違う。かつて貴婦人たちは身だしなみの一つとして、庭に咲く花やハーブを摘み、競って自慢の室内香作りに専念していたのである。
[森田洋子]
『熊井明子著『だれでもできる熊井明子のポプリ教室』(1999・誠文堂新光社)』
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…明治以降,匂袋をたしなむ人は少なくなったが,現在でも携帯用や訶梨勒(かりろく)型のような装飾を施したものが販売されている。西洋では,花や香草,香料を乾燥させたポプリpot‐pourriなどを詰めた匂袋をサシェsachetと呼び,起源はギリシア時代にさかのぼるといわれている。日本でもこの類の商品が出回ってきた。…
…明治以降,匂袋をたしなむ人は少なくなったが,現在でも携帯用や訶梨勒(かりろく)型のような装飾を施したものが販売されている。西洋では,花や香草,香料を乾燥させたポプリpot‐pourriなどを詰めた匂袋をサシェsachetと呼び,起源はギリシア時代にさかのぼるといわれている。日本でもこの類の商品が出回ってきた。…
※「ポプリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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