改訂新版 世界大百科事典 「ランタニド収縮」の意味・わかりやすい解説
ランタニド収縮 (ランタニドしゅうしゅく)
lanthanide contraction
ランタノイド(古くはランタニド元素と呼んだ)のイオン半径あるいは原子半径が,原子番号にしたがって減少する現象。同じような現象はアクチノイドでもみられ,これはアクチニド収縮と呼ばれる。一般に,原子あるいはイオンの大きさは最外側の核外電子の位置によって決まるが,たとえば原子半径では,一般的にいって周期表中の同じ族内では原子番号の増大とともに増加し,同じ周期内では原子番号の増大とともに減少している。これは同族内の元素の原子では,電子数が増加し,最外側電子はより外側の軌道に入るためであり,また同じ周期内の元素の原子では,原子番号の増大とともに,一つずつ電子が増加しても最外側の同じ軌道に入るため,原子核の電荷が1単位ずつ増加してそれだけ強くひきつけられるからである。ところがランタノイドおよびアクチノイドでは,原子番号の増大とともに増加する電子はそれぞれ4f電子および5f電子であって,最外側ではなく内側のいわゆる内部軌道であるため,原子核により強くひきつけられ,その結果大きさがより小さくなるのである。したがってⅢA族内での原子半径は,Sc,Y,Laと増大する。しかし,ⅣA族内ではTi,Zrと増大するが,Hfでは増大しない。ⅤA族のV,Nb,Taでも状況は同じである。これはランタニド収縮が原因であるとされている。イオン半径でもこの状況は同じであり,鉱石中からジルコニウムとハフニウム,ニオブとタンタルを分離することの困難さの原因となっている。
執筆者:中原 勝儼
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報