改訂新版 世界大百科事典 「原子半径」の意味・わかりやすい解説
原子半径 (げんしはんけい)
atomic radius
原子を球とみなしたときの半径で,結晶における原子核間距離,共有結合の結合間隔の実測値を各原子について加成性が成立するように割り当てた値である。イオン結合化合物におけるイオン半径とは厳密には区別される。単体の金属の結晶中で最近接原子の核間距離の半分が金属原子半径または金属結合半径と定義される。ファン・デル・ワールス力で凝集した結晶の最近接分子間にまたがる原子間距離からファン・デル・ワールス半径が決まる。共有結合にはいろいろな種類があるので,それぞれについて数値が決められている。表におもな原子の共有結合半径とファン・デル・ワールス半径を示す。典型元素の共有結合半径(単結合)は,周期表とよい対応関係にあり,一つの族のなかでは下にいくほど大きくなり,一つの周期のなかでは原子番号(したがって核電荷)が大きくなるほど小さくなる。原子半径は,原子の大きさや分子の大きさと形を想像するうえでは便利な尺度であるが,あくまでも便宜的なもので凝集状態にある原子を接し合う球とみなして求めたものである。原子核のまわりにある電子雲は広がりをもっていて,ある一定の半径の球で電子雲をすべて囲むことはできないから,原子そのものの大きさを表す尺度ではないことに注意する必要がある。
執筆者:木下 實
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報