ロン(民族)(読み)ろん(英語表記)Rong

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロン(民族)」の意味・わかりやすい解説

ロン(民族)
ろん
Rong

インド、西ベンガル州北部ダージリン付近(推計人口約2万5000人、1995)と、シッキム南部、ブータン西部、ネパール東部に住む人々。チベット・ビルマ系言語(レプチャ語)を用いる。「レプチャ」ともよばれたが、「レプチャ」はネパール人による最下層民をさす蔑称(べっしょう)であるので使用をさけるべきだろう。大麦、小麦、陸稲ソバを移動耕作していたが、現在では棚田(たなだ)耕作に移行し、茶園での雇用も主要収入源である。家族は拡大的で一夫多妻、一妻多夫ともにみられる。外婚集団はない。宗教は紅帽派チベット仏教(ラマ教)だが、ロン出身の僧は少ない。ヤギ、牛を供犠(くぎ)する古い信仰がとくに葬礼に残っており、土葬が多く火葬は上層に限られている。17世紀初めのボーティア(チベット人)侵入以後、政治的支配の手段でもあった村の寺院を中心にチベット仏教化が進行した。さらに18世紀初めにはヒンドゥーのネパール人が侵入した。中・近世ロン文化はチベット文化圏の一部をなし、南アジアと本格的に接触したのは、中・近世の自然国境だったテライ(ヒマラヤ山塊南側の平地の沼沢森林地帯)を越えてイギリス領化され、ダージリンを中心とした茶のプランテーション栽培が拡大してからの近代的現象である。

[佐々木明]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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