一八五〇年の妥協(読み)せんはっぴゃくごじゅうねんのだきょう(その他表記)Compromise of 1850

日本大百科全書(ニッポニカ) 「一八五〇年の妥協」の意味・わかりやすい解説

一八五〇年の妥協
せんはっぴゃくごじゅうねんのだきょう
Compromise of 1850

アメリカ合衆国において、南北戦争(1861~65)の前夜奴隷制准州の帰属をめぐる対立に際し交わされた一連の妥協的方策。奴隷制の廃止ないし拡大阻止論争は、メキシコ戦争(1846~48)に際し、新しく獲得される領土における奴隷制の拡大を禁じた「ウィルモット但書」をめぐる南北の対立となってすでに火を噴いていた。メキシコ戦争の結果、新たにメキシコより割譲されたカリフォルニアの連邦加入問題は、自由、奴隷両地域の地理的、政治的均衡を破り南部に決定的に不利に作用すると判断されたため、南北の対立はいっそう激化する傾向にあった。この機に際し、1850年、ホイッグ党のH・クレイは自ら議長を務める特別委員会に一連の妥協案を「オムニバス・ビル」として提出したが、ホイッグ党の北部議員を中心とする反対にあい、その後個別立法として議会を通過した。それは五つの法律からなり、カリフォルニアの自由州としての連邦加入を認めること、ユタおよびニューメキシコにおける奴隷制の存否は「住民主権説」に従うこと、さらにコロンビア特別区における奴隷売買の禁止、新たな逃亡奴隷取締法の制定などを含むものであった。このような妥協案は、奴隷制をめぐる南北対立の一時的な回避にしかすぎず、やがて南北戦争を迎えるところとなる。

[中谷義和]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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