翻訳|Utah
アメリカ合衆国西部の州。面積21万9931平方キロメートル、人口223万3169(2000)。州都ソルト・レーク・シティ。北をアイダホ州、北東をワイオミング州、東をコロラド州、南をアリゾナ州、西をネバダ州と境を接する。ロッキー山脈の支脈であるワサッチ山脈を境に、西側はグレート・ソルト・レークと砂漠を有するグレート・ベースンが、東側は4000メートル級の山が連なるユインタ山脈とコロラド高原が広がり、この山麓(さんろく)部の狭い地域にソルト・レーク・シティ、プロボー、オグデンなどの主要都市と州人口の4分の3が集中する。コロラド高原はコロラド川と支流のグリーン川が深い峡谷を刻み、景勝地が連続する。一部南西部の亜熱帯地域を除いて一般的に乾燥気候を呈するが、山麓部地域は年間を通して過ごしやすく、日照日にも恵まれる。
モルモン教徒の建設した州として広く世界に知られ、州人口の70%以上がモルモン教信者で占められ、宗教が政治・経済・教育・文化と強力に合体し、宗教抜きに州の発達は考えられない特異な州である。産業面では、以前からの鉱業、農業を追い越して近年は工業がその首位にあり、従来の食品加工、機械、金属、薬品、印刷・出版に加えて、合衆国の航空宇宙関連産業の一大集積地として注目を浴びており、研究開発も進んでいる。合衆国最大の地下資源の宝庫の一つとして同州の産業を引っ張ってきた鉱業では、石油、銅、石炭、モリブデンをはじめ、ベリリウム、金、銀、鉛や石灰、アスファルトなど、それぞれ豊かな埋蔵量を誇る。乾燥して肥沃(ひよく)な土壌に恵まれない農業は、農業収益の4分の3を牧畜に依存しており、ウシ、ブタ、ヒツジの放牧場が目だつ。小麦、大麦、乾草、タマネギなどの栽培とアプリコット、サクランボ、リンゴといった果物類が大量に出荷されている。また、州内にはブライス・キャニオン、ザイオン、キャニオンランズ、アーチス、キャピトル・リーフと五つもの国立公園を有し、通常の6倍の塩分を含有するグレート・ソルト・レークなどの景勝地やモルモン教関連の史跡など、観光資源の豊かさは合衆国随一といわれ、観光業が州経済に及ぼす影響は近年とくに見逃せない。モルモン教ではとくに教育・文化面を充実させることを重視し、その中心としてブリンガム・ヤング大学を建設、ユタ大学、ユタ州立大学と協調して教育施設の充実を図っている。文化活動は盛んで、隊員数350名を超える大聖歌隊モルモン・タバナクル・クワイアなどは世界的に有名である。他州と同様、ユタ州も1970年代から開発と環境保護をめぐっての論争が激しくなっており、近くで実施された核実験による癌(がん)患者多発事件や大陸間弾道弾の問題など広く世界の耳目を集めている。州名はインディアンの部族名にちなむ。
[作野和世]
1540年、軍人コロナードによって派遣されたスペイン人が同地を探検した。グレート・ソルト・レークは、1824年ジェームズ・ブリッジャーによって発見された。最初の定住者はモルモン教徒で、彼らは1847年B・ヤングに率いられてイリノイやミズーリから移住した。アメリカ・メキシコ戦争(1846~48)終結後、1848年のグアダルーペ・イダルゴ条約によってメキシコから合衆国の領土となり、1850年ユタ・テリトリーとして組織された。1857~58年には、モルモン教徒と合衆国との衝突であるユタ戦争が起きている。1896年、45番目の州として合衆国に加わった。
[野村文子]
琉球(りゅうきゅう)列島で、職業的な占い者のこと。女性が普通である。神意をうかがい、判じ事をするほか、口寄せをする者もいる。奄美(あまみ)諸島や沖縄諸島ではゆた、宮古列島や八重山(やえやま)列島ではムヌス(物知り)などとよぶ。首里(しゅり)王府の文書では「よた」と書く。現代でも多くの利用者があるが、悩み事の原因の判じは、たいていは祖先祭祀(さいし)や神信仰が足りないという「拝み不足」である。ゆたは、小さいときから異常な宗教的な精神現象を体験した人が、しだいに自覚して宗教体験を積み、占い者になることが多い。最終的には先輩のゆたについて宗教的な経験を積み、独立するらしい。奄美諸島には整った成巫(せいふ)儀礼があるが、明らかに修験道(しゅげんどう)の影響がある。
ゆたの本場といわれる沖縄本島の与勝(よかつ)半島では、ゆたは門中(もんちゅう)の祭祀について占いをする神役で、一般の人の求めに応じての占いもするという。那覇市などでは、マブイワカシ(魂(まぶい)別かせ)といって、四十九日に死者の霊を後生(ごしょう)に送る儀礼があり、ゆたが口寄せをして、死者のことばを伝えるが、地方では親族の老女が行うという。これも門中のゆたが口寄せをしたのが原形かもしれない。首里王府の女官にも「よたのあむしられ」がいた。「あむしられ」は女官の敬称である。この「よた」は、聞得大君(きこえおおぎみ)の行列の先導などをする役であるが、やはり占いをする王府のゆたであろう。1728年に王府は、ゆたの弊害を重視して禁止の布達を出すが、このとき王府の「よた」も廃止したという。その後も、ゆたの発言が民衆を惑わすとして、しばしば社会問題になり取締りが行われたが、ゆたの人気は今日なお衰えていない。
[小島瓔]
アメリカ合衆国西部の山地州。略称Ut.。連邦加入1896年,45番目。面積21万2751km2,人口276万3885(2010)。州都および最大都市ソルト・レーク・シティ。州名はユテ・インディアンにちなむ。ロッキー山脈の支脈ウォサッチ山脈が中央を南北に走り,東半は高原と山地からなる。西半はグレート・ベースン(大盆地)の乾燥地域に属し,北西部には世界最大級の塩砂漠グレート・ソルト・レーク砂漠と塩湖のグレート・ソルト湖がある。不毛な土地が多いため白人の入植は遅く,B.ヤングに率いられたモルモン教徒が東部での迫害を逃れて到来したのは1847年であった。彼らは州北部の乾燥した盆地で灌漑農業をおこし,49年には〈デゼレット州State of Deseret〉(デゼレットはモルモン教徒の言葉で〈勤勉なミツバチ〉の意)と称した。たび重なる連邦加入の申請は,論議の的となったモルモン教徒の一夫多妻制が廃止(1890)されたのちに認められた。現在も州民の約70%がモルモン教徒で,ソルト・レーク・シティに総本山をもつ。石油,金,ウランなどの鉱山に恵まれているが,なかでも世界最大の露天掘り銅鉱山ビンガム・キャニオンは有名である。小麦,牧草,リンゴなどの栽培はおもに灌漑農業による。工業化は1950,60年代に進み,ミサイル,エレクトロニクスなどの工業が盛んである。
執筆者:正井 泰夫
沖縄本島を中心に南西諸島で活躍する民間巫女。同じ部類に宮古島の〈カンカカリヤ〉,八重山群島の〈ムヌチ〉〈ニガイビ〉などがあり,〈トキユタ〉ともいわれる。語源は明らかでないが,よくしゃべることを〈ユタ口〉とか〈ユタユン〉ということから,神ダーリ(神がかり)にはいり,あらぬことをしきりに口走る様相をいい表したともいわれる。ウラル・アルタイ地方のシャーマンのユタカンに由来するとの説もある。ユタは神ダーリの巫病にかかり巫家を歴訪し,ウタキ(御嶽),グスク(城)などの聖地を巡って捜神の遍歴をつづけるうちに巫神の憑依をうけて成巫となる。人々の依頼によって卜占,祈願,信仰治療を行うが,霊魂の統御に力を発揮し,身体から脱出した生霊を旧に復する〈マブイグミ〉によって病気を治したり,死霊の口寄せ〈マブイワカシ〉の巫法を施すなど,霊界との交流をこころみる。
執筆者:桜井 徳太郎
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…面積=2266.04km2(全国44位)人口(1995)=127万3440人(全国32位)人口密度(1995)=562人/km2(全国10位)市町村(1997.4)=10市16町27村県庁所在地=那覇市(人口=30万1890人)県花=デイゴ 県木=リュウキュウマツ 県鳥=ノグチゲラ日本の最南西に位置し,沖縄島(本島)ほか160の島々からなる島嶼(とうしよ)県で,そのうち40島が有人島,他は無人島である。…
…シャーマン(巫者)が超越霊の憑依(ひようい)をうけて自我喪失の形で発する言葉,またはそうした呪儀を行う宗教職能者をさす。日本のシャーマンは,神社に所属する巫女(みこ)のように神楽や湯立てに奉仕するうちに祭神の憑依(神がかり)によって神託を述べる神社巫女と,民間にあって神仏の憑霊によるかあるいは死霊(ホトケ)の憑依をうけ,その意向を宣告する口寄せ巫女の2種に類別される。かつては前者の活躍がめだったが,神道教説の体系化にともない神社祭祀から巫祝的要素を排除する傾向がたかまるにつれ,神社巫女の形骸化がすすみ,託宣の機能は消滅した。…
…シャマニズムとは通常,トランスのような異常心理状態において超自然的存在(神霊,精霊,死霊など)と直接に接触・交流し,この間に予言,託宣,卜占,治病,祭儀などを行う人物(シャーマン)を中心とする呪術・宗教的形態である。〈シャーマン〉の語はツングース系諸族において呪術師を意味する〈サマンšaman,saman〉に由来するとする説が有力である。ほかに〈沙門〉を意味するサンスクリットの〈シュラマナśramana〉やパーリ語の〈サマナsamana〉からの借用語であるとか,ペルシア語の〈シェメンshemen〉(偶像,祠)からの転化語であるとする説もある。…
…神霊・死霊をはじめもろもろの精霊の憑依をうけて,その意思を人々に託宣する呪術宗教者。男女を区別して前者を覡,後者を巫と記す。《和名抄》に巫を加牟奈岐(かむなき),覡を乎乃古加牟奈岐(おのこかむなき)としているところをみると本来,巫女がもとであったことがわかる。各地域で活躍する巫女にはそれぞれ地域ごとの呼称が非常に多い。また語源についても神の子を意味する〈みかんこ〉の転としたり,貴人の子を敬って称する語としたり,神と人との間に介在して神意を人々に伝達する役がらから神そのものとみられたとする説などあって定かでない。…
※「ゆた」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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