七厘(読み)しちりん

精選版 日本国語大辞典 「七厘」の意味・読み・例文・類語

しち‐りん【七厘・七輪】

  1. 〘 名詞 〙 ( 物を煮るのに、価が七厘ほどの炭でまにあう意からという ) 焜炉(こんろ)のうち、特に土製のものをいう。かんてき。七厘がま。
    1. [初出の実例]「七リンひびく入相のかね〈信章〉 薬鍋三牛の古寺汲あげて〈芭蕉〉」(出典:俳諧・桃青三百韻附両吟二百韻(1678)奉納二百韻)
    2. 「お蝶はしちりんの炭を継(つぎ)、白湯(さゆ)を汲で来りお由に呑せ」(出典:人情本・春色梅児誉美(1832‐33)三)

七厘の語誌

( 1 )近世中期から用いられはじめ、明治時代には各家庭に普及していた。
( 2 )近世後期になると、上方では「かんてき」と呼ぶようになった。「浪花聞書」には「かんてき者 気早者也。かんてきは銅鍋を云。にゑが早いと云心か」とある。これが正しいとすると、癇癪持ちの意の「かんてき」から派生した語義ということになる(ただし、「かんてきは銅鍋を云」は誤りといわれる)。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「七厘」の意味・わかりやすい解説

七厘
しちりん

七厘こんろの略。七輪とも書く。煮炊きに用いるこんろのうち、土製のものを俗に七厘といい、燃料は木炭を用いる。関西では「かんてき」(癇癖(かんぺき)の転訛(てんか)、間鉄器)、「かんでき」という。内部が空洞中段に「さな」(火をのせる格子形の棚、簀子(すのこ))を設け、前面下方には戸のついた空気穴がある。さなの上に炭と火種をのせ、下からの風の多少により火力の調節を行う。七厘が普及するのは江戸時代の中期以降とみられるが、当時の家庭はせいぜい二つの「へっつい」で、飯と汁の煮炊きがやっとの状態であった。軽量で移動しやすく、こまごまとした料理や湯沸かしに便利なため急速に各家庭へ浸透した。名前のおこりは、わずか七厘の炭でまかなえたからとか、さなの種類が7種類あったからとかいうが、さだかでない。明治以後は、どの家庭でも七厘が用いられた。変種として石油ガス七厘が現れ、また都市ガスのこんろも七厘というが、元来の七厘とは構造が異なる。

[宮垣克己]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の七厘の言及

【七輪】より

…七厘とも書く。家庭での炊飯に用いる,小型で移動のできる土製のこんろ。…

※「七厘」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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