万富東大寺瓦窯跡(読み)まんとみとうだいじがようせき

日本歴史地名大系 「万富東大寺瓦窯跡」の解説

万富東大寺瓦窯跡
まんとみとうだいじがようせき

[現在地名]瀬戸町万富

国指定史跡。万富集落の北に接する小丘から北方に連なる低い丘陵の斜面に分布する。瓦窯は山腹の斜面を利用して築かれたロストル式の平窯で、昭和五四年(一九七九)の確認調査では一三基の窯跡が確認された。しかしこの調査は一部の地区について実施されたもので、窯跡はこの調査地域外にも広がっており、遺跡全容はより大規模なものと考えられている。調査された瓦窯で生産された瓦は、東大寺の刻印を打った平瓦であるが、付近で発見されている瓦には、中房に東大寺大仏殿の刻印をもつ蓮華文軒丸瓦、同様の刻印を横に展開した軒平瓦があり、この窯が、鎌倉時代の東大寺再建に当たって使用された瓦を生産したことを示している。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

国指定史跡ガイド 「万富東大寺瓦窯跡」の解説

まんとみとうだいじかわらがまあと【万富東大寺瓦窯跡】


岡山県岡山市東区瀬戸町にある窯跡。JR山陽本線万富駅の北方約400m、南北に細長い丘陵(大寺山)の西斜面にある。古くから東大寺の刻印のある瓦や窯壁が発見されていたことから、1927年(昭和2)に国の史跡に指定された。源平の戦いで焼失した東大寺は、朝廷鎌倉幕府の支援のもとで、僧俊乗房重源(しゅんじょうぼうちょうげん)を中心に再建された。1193年(建久4)、重源は再建費用を集める大勧進職(だいかんじんしき)に任命され、その国税を再建費用にあてる造営料国(ぞうえいりょうごく)として備前国を賜った。万富地域は、良質の粘土が豊富で、水運の便がよい吉井川があり、東大寺瓦の製造窯が築かれたと考えられる。この窯で約30万~40万枚の東大寺瓦が製造されたといわれる。1979年(昭和54)と2001年(平成13)からの発掘調査によって、14基の瓦窯が確認された。竪穴(たてあな)遺構や建物跡、暗渠(あんきょ)排水施設などが発見され、付近一帯が大規模な瓦製造工場であったと推定される。2004年(平成16)に追加指定された。JR山陽本線万富駅から徒歩約10分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

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