改訂新版 世界大百科事典 「三方楽所」の意味・わかりやすい解説
三方楽所 (さんぽうがくそ)
雅楽用語。楽所(がくしよ)/(がくそ)は宮中における雅楽演奏家詰所のような意図で948年(天暦2)に設けられたが,やがて,従来は楽舞を管轄していた雅楽寮に代わる機関として公式に機能するようになった。応仁の乱(1467-77)等で宮廷の雅楽が維持困難になり,16世紀後半離散した旧来の宮廷所属楽人(京都方)を補う形で,寺社の雅楽に従事していた大坂四天王寺(天王寺方)と奈良興福寺(南都方)の楽人若干名が招集された。三方楽所とは,京都方,天王寺方,南都方の3系統から成る新生宮廷楽団をさす名称である。ただし3系統それぞれの構成員による演奏者集団を包括して三方楽所と称する場合もある。江戸時代を通じて三方楽所の制度は技芸水準の維持向上の契機となった。1870年(明治3)楽所は廃され,雅楽局(今日の宮内庁楽部)が設けられたが,三方楽所に所属した家系の伶人が組織されて伝統を維持した。家系や専業は三方の各項目を参照されたい。
→雅楽
執筆者:高橋 美都
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報