改訂新版 世界大百科事典 「世界農業センサス」の意味・わかりやすい解説
世界農業センサス (せかいのうぎょうセンサス)
World Agricultural Census
センサスとは通常,調査対象のすべてについて調査票を用い,全般的な多項目にわたる調査を行うことを意味するが,世界農業センサスは経済統計に関する国際条約(1927)にもとづき,10年ごとに実施されるものである。日本でセンサス方式で最初に実施された農業に関する調査は1938年の農家一斉調査であるが,本格的に実施されるようになったのは,50年FAO(国連食糧農業機関)が世界的規模でその実施を提唱した50年世界農業センサスに参加したときからである。その後10年ごとに世界農業センサスに参加して〈世界農林業センサス〉(1960年から日本独自に林業センサスも併せて実施)を実施するとともに,その中間の5年目ごとに日本独自の〈農業センサス〉を実施している。調査の内容は農家および農家以外の農業事業体のすべてについて,世帯員の就業状況,農業雇用労働,経営耕地,耕地の貸借,家畜の所有,農業機械の所有・利用,農作物の作付状況,農産物の販売,請負作業,農業生産組織への参加状況など多項目にわたり調査が行われるとともに,日本独自の立場から農業集落に関する調査や農業経営の農作業等を分担して受託する農業サービス事業体(農協や農家集団等)の関する調査なども併せて実施されている。このように世界農林業センサス,農業センサスは農林業に関する資源総量の把握をめざすとともに,農家・林家の経済的性格の変化,農業生産構造の変化を包括的に把握することを意図するものであり,日本の農業構造の現状を把握するための最も基本的な農業統計である。なお上記両センサスの行われない年次においては補完的な標本調査として1951年から農業動態調査(名称はその後,農業調査,農業構造動態調査と改称)が毎年実施されている。
なお,FAO提唱の世界農業センサスは,FAOの前身である万国農事協会が1930年に世界38ヵ国の参加で行ったことに始まる。40年の調査は第2次大戦のため行われず,戦後はFAOに引き継がれ,50年以降10年ごとに実施。
→農業統計
執筆者:今村 奈良臣
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報