センサス(読み)せんさす(英語表記)census

翻訳|census

デジタル大辞泉 「センサス」の意味・読み・例文・類語

センサス(census)

人口調査国勢調査
農業や工業など、国勢のさまざまな側面について行う統計調査。「農林業センサス

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精選版 日本国語大辞典 「センサス」の意味・読み・例文・類語

センサス

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] census )
  2. 人口調査。国勢調査。〔国民経済講話‐乾(1917)〕
  3. 特定の社会事象につき、特定時点に一斉に行なう全数調査。「工業センサス」など。
    1. [初出の実例]「その数は、昭和二十四年の農業センサスについてみても」(出典:旅‐昭和二六年(1951)六月号・酪農エレジー)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「センサス」の意味・わかりやすい解説

センサス
せんさす
census

一国全体あるいは相当広範囲にわたる特定地域の人々を対象とし、政府等の公的機関が、対象のすべてについて、一定時点における基本的な諸属性を、一定期間ごとに調査すること、および調査結果を集計・整理・編集して公表したもの。これが、国際機関での勧告あるいは諸国で行われてきた調査から集約されるセンサスについてのいちおうの定義である。この定義に従うと、センサスの特徴として、次の点があげられる。(1)人口を対象とすること、(2)大規模な調査であること、(3)全数調査であること、(4)公的機関によって行われること、(5)調査内容が多方面にわたること、(6)静態に関する調査であること、(7)一定期間ごとに長期にわたり継続して行われることが予定されていること。

 (1)の点に関しては、センサスが人口調査を起源としたことによるものであり、したがって国勢調査と同義に解されてきた。しかし、今日では、対象を人口に限定せず、(2)以下の特性をもつ調査をすべてセンサスとよぶようになってきている。農業センサス、工業センサスなどがその例である。(2)(3)(5)の特性は、この調査が対象集団の規模および構造を明らかにすることを目的とすることによるものである。ただ、(3)に関しては、他の特性を維持しつつ、悉皆(しっかい)的に調査せず標本調査の手法で行われる場合につき、サンプル・センサスsample censusの呼び名がある。これをセンサスの一種とみるかどうかについては意見の相違がある。(6)の点については、この調査は集団の特定時点における静的な状態を観察するものであるが、規模および構造の変動状況を追跡するために、(7)の周期的な調査が一般に予定されるのである。最後に(4)の調査主体に関しては、この調査が国家や社会の基本構造を把握し、政治・行政の前提となるものであるところから、一定の法的強制力をもって行われるのが普通である。

高島 忠]

沿革

人口調査の歴史は古く、紀元前4000~前3000年ごろにすでにバビロニアエジプト、中国などにおいて行われていたが、センサスの語源は、古代ローマにおいて市民登録と徴税にあたった役人の職名ケンソルCensorからくるものとされている。ケンソルによる初めての人口調査は前435年に行われている。

 近代国家の形成に伴い、その基盤となる人口調査が欧米各国を中心に一斉に行われることになり、世界最初の近代的センサスがアメリカ合衆国において1790年に実施された。続いて1801年にフランス、イギリス、デンマークポルトガル、1815年にノルウェー、1818年にオーストリア、1829年にオランダ、1837年にスイス、1846年にベルギー、1857年にスペイン、1861年にイタリア、そして1871年にカナダとドイツにおいてそれぞれ第1回の人口センサスが行われた。その後ほぼ10年置きに行われて現在に至っている。調査の方法は、いずれの国でも調査員による調査票の配布・収集によって行われているが、アメリカでは郵送も併用されている。

 日本では、戦国・織豊(しょくほう)期ごろから兵力や労働力把握のため各領主による人別改(にんべつあらため)(人口調査)が行われるようになり、江戸時代に入るとかなり大規模に実施された。近代的な国勢調査は、日露戦争などの事情によって実施が遅れ、結局、第1回調査は1920年(大正9)に行われた。アメリカでの最初の近代的センサス実施から遅れること130年であった。その後、5年ごとに実施されている。

[高島 忠]

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改訂新版 世界大百科事典 「センサス」の意味・わかりやすい解説

センサス
census

センサスとは,本来は古代ローマで行われた人口登録調査のことであるが,後には国勢調査あるいはそれに類する大規模な人口調査のことをいうようになり,さらには一定の社会集団全体を対象とした大規模な全数調査のことも指すようになった。現在では人口センサス(国勢調査)のほかに,事業所センサス,農業センサス,林業センサス,工業センサス,商業センサスなどの言葉が用いられている。

 センサスは標本調査に対比して用いられているが,この二つの間には単に全数を調査するか標本を調査するかの差があるだけではなく,目的に違いがある。センサスは対象となる集団の大きさ,構造を明らかにすることが本来の目的であって,集団のいくつかの特性値を知ろうとする標本調査とは本質的に異なる面がある。
執筆者: なお,野生動物の個体数調査もセンサスと呼ばれるが,その実際については〈個体数推定法〉の項目を参照されたい。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「センサス」の意味・わかりやすい解説

センサス
census

元来は人口静態統計を得るための人口センサスを意味するが,現在では人口のみならず,ある時点における,ある集団を構成する全単位に関する全数調査をいう。調査対象のすべてを調査するので,(1) 統計数値に関する信頼性が高い,(2) 多重クロスの分類を用いても分析に耐えうる対象数が得られる,(3) 関連する標本統計の母集団となるなどの長所をもつが,(1) 調査費用がかかる,(2) 集計に時間を要する,(3) 調査の徹底化の程度によっては誤差が介入する,(4) 分析に必要な特殊項目について調査が行いにくいなどの欠点がある。日本におけるセンサスとしては,総務省統計局が行う国勢調査,事業所統計調査が代表的であるが,このほか経済産業省の工業センサス,商業センサス,農林水産省の農林業センサスなどがあげられる。

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百科事典マイペディア 「センサス」の意味・わかりやすい解説

センサス

一国あるいは一定の行政地域内における人口静態について,各個人の全部をもれなく,かつ重複なく観察する直接調査,とりわけ実地調査。日本では国勢調査や,それに類する大規模な人口調査をさしていわれたが,さらに近年は人口以外の漁業・農業などの全数調査をさしていうこともある。
→関連項目杉亨二

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世界大百科事典(旧版)内のセンサスの言及

【ローマ】より

…キリスト教は帝国各地に広まったがローマ元老院には4世紀末まで伝統宗教に固執する勢力が存続し,その他の神々もなお根強く礼拝された。キリスト教徒迫害ローマ神話【松本 宣郎】
【人口】
 ローマおよびローマ帝国の人口は,古くからの戸口・財産調査(ケンススcensus。英語センサスの語源)についての記事をもとにして,ある程度のことが推定される。…

【経済統計】より

…統計調査には全数調査と標本調査の二つがある。全数調査はセンサスとも呼ばれ,たとえば国勢調査では全国の全世帯,事業所統計では全事業所というように,対象となる客体をすべて網羅している。全数調査は国の基幹となる統計であるが,多くの経費や時間を要するので,毎年ではなく5年とか3年おきの調査が多い。…

【統計】より

…業務統計の主要なものには出生・死亡,婚姻・離婚の届出にもとづいて作られる人口動態統計,税関の申告書にもとづいて作られる通関貿易統計などがある。 統計調査はセンサス,構造統計,動態統計の3種類に分けて考えることができる。センサスは集団全体を把握して,もれなく数え上げることを目的として行われる調査であり,全国民を対象とする国勢調査のほか,全産業の全事業所を対象とする事業所統計(事業所センサス)および工業統計(工業センサス。…

【ローマ】より

キリスト教徒迫害ローマ神話【松本 宣郎】
【人口】
 ローマおよびローマ帝国の人口は,古くからの戸口・財産調査(ケンススcensus。英語センサスの語源)についての記事をもとにして,ある程度のことが推定される。戸口・財産調査は課税と軍事奉仕の基礎として行われ,初めは王,やがてはコンスル,そして前443年以降はケンソルの職務となった。…

※「センサス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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